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無借金経営は、フィデューシャリー・デューティーに反すか
金融研究部 取締役 研究理事 兼 年金総合リサーチセンター長 兼 ESG推進室長 德島 勝幸
一方で、借入れ・社債発行といった負債による調達の場合には、元本を期日に弁済することが求められており、借換えを含めて資金手当が準備出来ない場合には、当該企業は倒産に追い込まれることになる。しかし、税効果の存在を考えるならば、赤字決算の継続で法人税を支払っていない企業を除いて、一般的な大企業にとっては負債による資金調達が望ましい資金調達手段なのである。ただし、これはコストの損金性に着目した一般論に留まる。実際には、使途によっては、取り入れ可能な資金の期間とマッチしない可能性もあり、元本償還が不要な株式での調達や、期限前償還条項を付して企業の都合によって返済時期を変えることの出来るハイブリッド証券による調達も、期間という観点において十分なメリットとなる判断も考えられる。
これまで述べてきたような諸要素を勘案すると、無借金経営が意味することは、手元流動性の範囲でしか投資を行わないだけでなく、負債による資金調達を行うことで得られるレバレッジ効果を狙わない消極的な経営であるということになる。噛み砕いて言えば、株主に対して更なる利益獲得が出来ない、その手段を発見することが出来ないということすら意味しているのである。果たして、それは株主のエージェンシーとしてフィデューシャリー・デューティーを負う経営者として相応しい姿勢なのだろうか。基本的に求められる姿勢はコンプライ・オア・エクスプレインであるから、株主が納得すれば良いということも考えられるが、機関投資家が株主の場合には、機関投資家も自らの株式を保有する株主に対してのフィデューシャリー・デューティーを問われるのである。改めて、フィデューシャリー・デューティーの意味するところを考える必要がありそうだ。
03-3512-1845
- 【職歴】
・1986年 日本生命保険相互会社入社
・1991年 ペンシルバニア大学ウォートンスクールMBA
・2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社に出向
・2008年 ニッセイ基礎研究所へ
・2021年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・日本ファイナンス学会
・証券経済学会
・日本金融学会
・日本経営財務研究学会
(2016年11月25日「研究員の眼」)
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