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- 【アジア・新興国】タイの生命保険市場(2015年版)
2016年11月15日
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1―はじめに
タイ生命保険マーケットは一貫して拡大しており、直近10年間の年平均成長率CAGR(Compound Average Growth Rate)は12.4%増と高水準である。本稿では、この高い成長が続くタイ生保市場の2015年の動向について確認する。
2―2015年の生命保険市場動向
2015年の収入保険料の伸びが鈍った要因としては、(1)消費者ニーズに応える商品を出せなかったことに加え、(2)景気回復の頭打ち感や農産物価格の下落による農業所得の減少など消費者の購買力が弱かったこと、(3)15年は3月と4月に中央銀行が0.25%ずつ政策金利を引き下げるなど低金利の厳しい運用環境が続くなか、一部の生命保険会社が一時払い養老保険の販売を見合わせたことが挙げられる。

将来に向けた課題としては、少子化が著しく進んでいることが挙げられる。実際、タイの2014年の合計特殊出生率は1.5と、東南アジアではシンガポール(1.3)に次いで低い。出生率向上は時間の掛かる課題であるだけに、政府には中長期的な対応策が求められている。
(国際比較)
諸外国と比較すると、タイの生命保険市場が依然として高い成長を遂げていることが分かる。スイス再保険会社4によると、2015年のタイの生命保険料(インフレ調整後)は前年比7.5%増と、世界全体の同4.0%増を上回った(図表3)。
また2015年のタイの保険密度(国民1人当たり生命保険料)は215ドル、生命保険浸透度(対GDP比の生命保険料)は4.1%と、それぞれ緩やかな上昇傾向にあるが、日本や韓国、台湾、香港、シンガポールといったNIEs(新興工業経済地域)4カ国と比べると依然として低水準に止まっている(図表4,5)。つまり、このことはタイ生命保険市場が将来の成長余地が十分にあることを示している。
1 1人当たりGDPが5,000米ドルを超えると生命保険が飛躍的に普及すると言われており、タイは2011年頃にこの水準を超えている。
2 CFP(CERTIFIED FINANCIAL PLANNER)、AFPT(Associate Financial Planner Thailand)はそれぞれファイナンシャルプランナーの資格。
3 政府は社会保障制度の整備の遅れを背景に保険の加入を奨励しており、保険契約期間が10年以上の生命保険契約において死亡保障の保険料部分(最大10万バーツ)の生命保険料控除を受けることが出来る。
4 スイス再保険会社Swiss Re,Sigma No3/2016
2|保険種類別の販売動向
保険種類別に新契約保険料を見ると、個人保険が前年比0.7%増の1,224億バーツ、団体保険が同0.7%増の426億バーツと、それぞれ小幅の伸びに止まった。また簡易保険は同26.8%減の7億バーツ、個人傷害保険が同1.9%減の56億バーツと、それぞれ減少した(図表6)。
収入保険料を見ると、最大の個人保険は前年比7.6%増の4,663億バーツ、団体保険は同2.6%増の580億バーツ、簡易保険は同6.1%減の75億バーツ、個人傷害保険は同2.3%減の57億バーツとなった。結果、収入保険料シェアは個人保険が86.7%と、前年から0.7%ポイント拡大し、シェアの大半を占める構図には変化が見られなかった(図表7)。
保険種類別に新契約保険料を見ると、個人保険が前年比0.7%増の1,224億バーツ、団体保険が同0.7%増の426億バーツと、それぞれ小幅の伸びに止まった。また簡易保険は同26.8%減の7億バーツ、個人傷害保険が同1.9%減の56億バーツと、それぞれ減少した(図表6)。
収入保険料を見ると、最大の個人保険は前年比7.6%増の4,663億バーツ、団体保険は同2.6%増の580億バーツ、簡易保険は同6.1%減の75億バーツ、個人傷害保険は同2.3%減の57億バーツとなった。結果、収入保険料シェアは個人保険が86.7%と、前年から0.7%ポイント拡大し、シェアの大半を占める構図には変化が見られなかった(図表7)。
(2016年11月15日「保険・年金フォーカス」)
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03-3512-1780
経歴
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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