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ドイツの生命保険会社の状況(2)-BaFinの公表資料より(ソルベンシーII比率の状況)-
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自己資本のうちの95%は、最高クラスの資本(Tier 1)に帰属している。
2016年1月1日から3月31日にかけては、資産及び負債の市場整合的な評価の影響で、基礎的自己資本は平均12.7%下落した。
2016年1月1日で、SCR資本に適格な額は1,088億ユーロに達したが、その95%が最高クラスの資本(Tier 1)に属している。適格自己資本の約1%だけが付随的自己資本であり、残りがいわゆる基礎的自己資本となる。後者は、業界平均で、いわゆる利益準備金(計算で得られる:負債を超える資産の総剰余マイナス自己資本、予測可能な配当金及びその他の基本的な独自項目)が約61%を占めている。そして、剰余金(コミットされていない余剰資金の自己リソースとして、ソルベンシーIIでクレジット可能なものに等しい)が約30%。シートの日付において他の注目すべき要素は、資本剰余金を含む資本(5%)及び劣後債務(3%)となっている。
図3は、2016年1月1日と3月31日のそれぞれにおける部門レベルでの基礎的自己資本の集計値とその構成を示している。変化した資本市場の状況が最初の四半期末の生命保険会社の資本基盤に重大な影響を与えたことは明らかである。ここでは、資産及び負債の市場整合的な評価の影響がソルベンシーIIの下で表示されている。主に利益準備金の減少により、基礎的自己資本は、2016年第1四半期に平均12.7%下落した。
公表資料に、投資の内訳についての記載も含まれている。
これによれば、国債・社債等の債券が5割、株式が約4分の1を占めている。
投資の内訳
2016年1月1日において、生命保険会社の投資は、市場価値で約9,900億ユーロの規模だった。図4は、大部分は債券に関連して、特に、財務省証券(19%)や社債、債務証書及びファンドブリーフ債(30%)であることを示している。株式及び関係会社の株式(含む投資)は、投資の約4分の1(25%)、直接保有する株式の割合は低い(1%)。大きなシェアを占めているのは、譲渡可能証券への集団投資事業(UCITS8)、即ちUCITS指令の下での投資ファンド(11%)とローンや住宅ローン(9%)である。
8 UCITSとは、「Undertaking for a Collective Investment in Transferable Securities」の略で、EUの法律に従って設立・運用されている投資ファンドのことを指し、具体的にはEUの「UCITSに関する欧州委員会指令」を満たしているファンドを指している。ドイツ語では、「Organismen für gemeinsame Anlagen in Wertpapieren (OGAW)」と表現されている。
BaFinの保険年金ファンド監督のチーフ・エグゼクティブ・ディレクターであるFrank Grund氏は「現在の低金利がドイツの生命保険会社を大きく苦しめてきた。法定の経過措置は、現在ここに期待通りの緩和効果をもたらしている。しかしながら、将来に向けて、いくつかの会社は、継続的な低金利と経過措置の段階的な減少の中で、持続可能なソルベンシー要件充足のために多大な努力をしている。BaFinが、強化した監督でこれらの努力に随行している。」と結論付けている。
4―まとめ
巷間言われているように、ドイツの生命保険会社は、新たなソルベンシーII制度の適用に当たって、多くの会社がボラティリティ調整や技術的準備金のための経過措置を使用していることが明らかにされている。さらに、昨今のような金利がより一層低下した市場環境下では、特に技術的準備金のための16年間にわたる経過措置等を適用しない場合には、十分なソルベンシー比率をカバーできない会社が多数発生してくる等、かなり厳しい状況になっていることが示されている。
BaFinとしてもこうした状況を十分に認識した上で、会社に対して、16年間の経過期間中に必要な対策を講じていくための「行動計画」を提出させ、BaFinが定期的にそのフォローを行っていくことを述べている。
次回のレポートでは、こうしたドイツの生命保険会社の監督規制に関するIMFによるFSAPの結果について、その概要を報告する。
(2016年09月26日「保険・年金フォーカス」)
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中村 亮一のレポート
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