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- 若年層の経済格差と家族形成格差~増加する非正規雇用者、雇用形態が生む年収と既婚率の違い
2016年09月08日
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4|雇用形態別に見た年収階層別の雇用者数分布~年齢とともに正規で2つの分布、ピークは高い位置へ
ところで、次節で詳しく示すが、男性では年収300万円あたりに家族形成の壁がうかがえる。その壁にぶつかっている層を推計するために、前段階として、収入階層別の雇用者数を確認する。
図表5は、各年齢階級で雇用形態ごとに所定内給与額(毎月きまって支給する現金給与額のうち、超過労働給与額を差し引いた額)階級別の雇用者数を見たものだ。なお、図中の数値は、各年齢階級における雇用形態別の所定内給与額の平均値で、図表4の平均年収の推計で用いたものだ。
図表5を概観すると、男性の正規雇用者では、年齢とともに雇用者数のピークが所定内給与額階級の高い階級へ移動するとともに(20~24歳:20.0~21.9万円→35~39歳:28.0~29.9万円)、2つ目のピークがより高い階級(40~44.9万円)にあらわれる。よって、各年齢階級における所定内給与額の平均値より低い階級と高い階級に2つの雇用者分布ができるようになる。なお、図表5には示していないが、40代以降では、1つ目の雇用者数分布より、2つ目の分布の方が大きくなっていく。一方、非正規雇用者では、ピーク位置が正規雇用者より低い位置にあり、また、年齢が上がってもピーク位置は正規雇用者ほど動かずに10万円台後半で推移する(20~24歳:16.0~17.9万円→35~39歳:18.0~19.9万円)。また、詳細に見れば、非正規雇用者でも正規雇用者と同様に、所定内給与額階級の比較的高い位置で2つ目のピークが成長していくのだが、正規雇用者ほど顕著ではない。
ところで、次節で詳しく示すが、男性では年収300万円あたりに家族形成の壁がうかがえる。その壁にぶつかっている層を推計するために、前段階として、収入階層別の雇用者数を確認する。
図表5は、各年齢階級で雇用形態ごとに所定内給与額(毎月きまって支給する現金給与額のうち、超過労働給与額を差し引いた額)階級別の雇用者数を見たものだ。なお、図中の数値は、各年齢階級における雇用形態別の所定内給与額の平均値で、図表4の平均年収の推計で用いたものだ。
図表5を概観すると、男性の正規雇用者では、年齢とともに雇用者数のピークが所定内給与額階級の高い階級へ移動するとともに(20~24歳:20.0~21.9万円→35~39歳:28.0~29.9万円)、2つ目のピークがより高い階級(40~44.9万円)にあらわれる。よって、各年齢階級における所定内給与額の平均値より低い階級と高い階級に2つの雇用者分布ができるようになる。なお、図表5には示していないが、40代以降では、1つ目の雇用者数分布より、2つ目の分布の方が大きくなっていく。一方、非正規雇用者では、ピーク位置が正規雇用者より低い位置にあり、また、年齢が上がってもピーク位置は正規雇用者ほど動かずに10万円台後半で推移する(20~24歳:16.0~17.9万円→35~39歳:18.0~19.9万円)。また、詳細に見れば、非正規雇用者でも正規雇用者と同様に、所定内給与額階級の比較的高い位置で2つ目のピークが成長していくのだが、正規雇用者ほど顕著ではない。
5|年収300万円未満層の人口・雇用者比率~20代男性263万人・雇用者の過半数、非正規では約8割
次に、年収300万円未満層を推計する。図表4の20~24歳の男性正規雇用者の平均年収(292.6万円)の推計で、所定内給与額の平均値(20.8万円)に年間賞与その他特別給与額を合わせたことを参考に、ここでは「所定内給与額階級20.0~21.9万円以下」を年収300万円以下と仮定する。ただし、この仮定では、男性正規雇用者の所定内給与額と年間賞与その他特別給与額から推計した年収を参考にしており、男性非正規雇用者や女性では、男性正規雇用者と所定内給与額階級が同等でも、年間賞与その他特別給与額は少ない可能性がある。その場合、実際の年収は男性正規雇用者で想定したものより少なくなる。よって、男性非正規雇用者や女性における年収300万円未満の層は、この推計で得た結果より、やや多い可能性がある。
以上を踏まえて図表7を見ると、20~24歳の男性で年収300万円未満の雇用者は150万人で、同年代男性の正規雇用者と非正規雇用者を合わせた雇用者合計の74.9%を占めると推測される。雇用形態別に見ると、20~24歳男性の正規雇用者で年収300万円未満は83万人(同年代正規雇用男性の68.1%)、非正規雇用者では67万人(同85.5%)となる。
分かりやすさのため、図表7の正規雇用者と非正規雇用者を占める「所定内給与額階級20.0~21.9万円以下」の割合、つまり年収300万円未満と推定される層の割合を図表8に図示化した。
図表8を見ると、年収300万円未満層の割合は、正規雇用者より非正規雇用者の方が多い。また、男女とも20~24歳では正規雇用者でも7割程度を占めるが、年齢とともに低下し、45~49歳では男性は1割を下回り、女性でも3割程度まで低下する。一方、非正規雇用者では、20~24歳では男女とも9割前後を占め、正規雇用者ほど年齢に伴って大きく低下するわけではないため、45~49歳でも男性は6割、女性は8割程度を占める。
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以上を踏まえて図表7を見ると、20~24歳の男性で年収300万円未満の雇用者は150万人で、同年代男性の正規雇用者と非正規雇用者を合わせた雇用者合計の74.9%を占めると推測される。雇用形態別に見ると、20~24歳男性の正規雇用者で年収300万円未満は83万人(同年代正規雇用男性の68.1%)、非正規雇用者では67万人(同85.5%)となる。
分かりやすさのため、図表7の正規雇用者と非正規雇用者を占める「所定内給与額階級20.0~21.9万円以下」の割合、つまり年収300万円未満と推定される層の割合を図表8に図示化した。
図表8を見ると、年収300万円未満層の割合は、正規雇用者より非正規雇用者の方が多い。また、男女とも20~24歳では正規雇用者でも7割程度を占めるが、年齢とともに低下し、45~49歳では男性は1割を下回り、女性でも3割程度まで低下する。一方、非正規雇用者では、20~24歳では男女とも9割前後を占め、正規雇用者ほど年齢に伴って大きく低下するわけではないため、45~49歳でも男性は6割、女性は8割程度を占める。
(2016年09月08日「ニッセイ景況アンケート」)
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経歴
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
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