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企業年金や個人年金は、高齢者家計の役に立っているか?
保険研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任 中嶋 邦夫
同調査によれば、公的年金(恩給を含む、以下同じ)もしくは私的年金のいずれかを受給している世帯(世帯人員2人以上)は1,663万世帯(概数、以下同じ)と推計されている1。このうち、公的年金のみを受給しているのが994万世帯(60%)、公的年金と私的年金の両方を受給しているのが561万世帯(34%)、私的年金のみを受給しているのが108万世帯(6%)となっている。
公的年金のみを受給している世帯と公的年金と私的年金の両方を受給している世帯の月間の支出状況を比較すると、両者の収入を同程度に揃えても、公的年金と私的年金の両方を受給している世帯の方がレジャーや交際費などに支出する金額が大きい傾向がある。
図表1は、公的年金もしくは私的年金のいずれかを受給している世帯を、年収の低い方から並べて5分の1ずつグルーピングしたもの(年間収入五分位階級)のうち、低い方から2~4番目のグループを見たものである。グループごとに、公的年金のみを受給している世帯と公的年金と私的年金の両方を受給している世帯を比べると、いずれのグループでも、私的年金も受給している世帯で支出が多くなっており、さらに両世帯の差は食費に比べてレジャー・交際費等で大きくなっている。言い換えれば、私的年金も受給している世帯は、公的年金のみを受給している世帯と比べて、同程度の収入でも支出の面でより充実した生活を送っているといえよう。
もう1つの理由として考えられるのは、収入源が複線化していることへの安心感ではないだろうか。公的年金からの収入は、昨年から始まったマクロ経済スライドや、今後起こりうる制度改正によって変動するリスクがある。一方、企業年金や私的年金には今後のインフレによって実質的な価値が変動するリスクがあるが、公的年金のリスクとは種類が異なる。同じ収入でも収入源が分かれていれば、リスクが分散されている安心感があると考えられる。
いずれにしても、私的年金も受給している世帯は、公的年金のみを受給している世帯と比べて、同程度の収入でも支出の面でより充実した生活を送っているのは事実である。しかし、私的年金も受給している世帯は全体の3分の1に過ぎない。私的年金も受給している世帯の割合を都道府県別に見ると、経済活動が活発な地域で高い傾向がある(図表2)。私的年金の受給によるメリットを広げるために、企業年金や個人年金の裾野を広げる政策や取り組みが求められる。
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(2016年09月05日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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