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オフィス市場におけるインバウンドの影響~教育関連施設やアジア系企業の拡大などに期待~

増宮 守
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- インバウンド(訪日外国人旅行)の拡大を受け、ホテルや民泊、一部の商業施設などで需要拡大がみられた一方、賃貸オフィス需要への影響は明確ではない。
- しかし、オフィス供給面をみると、海外資金の流入やインバウンド宿泊需要の拡大が、築古ビルの取り壊しなどを促進し、オフィス供給を抑える要因のひとつになっている。
- 今後、メルボルンや香港での事例にみられるように、東京でも教育関連施設やアジア系企業などによるインバウンドオフィス需要の拡大に期待したい。さらなる都市の国際化と発展に向け、インバウンドの拡大を一時的な需要に止めず、有力な外資系企業や人材の定着に繋げることが重要である。
■目次
1.インバウンド(訪日外国人旅行)の拡大
2.海外資金の流入やインバウンド宿泊需要の影響
3.メルボルンでの教育関連機関によるオフィス需要
4.香港での中国本土企業によるオフィス需要
1.インバウンド(訪日外国人旅行)の拡大
海外から簡単にインターネットで予約2できる民泊は、比較的安価で、日本の日常を体験できる側面もあることから、外国人旅行者に人気である。そもそも、民泊は欧米を中心に普及3してきたビジネスであるため、日本でも利用経験のある外国人旅行者が中心に利用しており、ホテルや商業施設と同様、インバウンドの主な受け皿になっている。
一方、賃貸オフィス市場では、インバウンドの影響は明確には認識されていない。たとえば、インバウンド需要を享受するホテルや小売チェーンは、店舗網を拡大してもオフィスまで拡大するケースは少なく、また、一部の小売チェーンが店舗用にオフィススペースを賃貸することはあるものの、限定的でオフィス市場への影響は小さい。インバウンドの拡大は部分的に景気を支えてはいるが、オフィス需要に寄与しているとの認識は薄く、恩恵が顕著な宿泊施設、商業施設市場とオフィス市場との間でインバウンドに対する温度差がみられる。
1 2008/6/20の観光立国推進戦略会議において、2020年までに訪日外客数を2,000万人とする目標が設定されていた。政府は2016/3/30に、新たな目標として2020年に4,000万人、2030年に6,000万人と発表した。
2 欧米人に人気の「Airbnb (エアビーアンドビー、米サンフランシスコ本社)」の他、中国人が主に利用する「住百家」、「途家」、「自在客」などのウェブサイトからも予約できる。
3 Airbnbは2008年に設立し、その後、世界的に展開。
2.海外資金の流入やインバウンド宿泊需要の影響
こうしたオフィスビルの取り壊しなどは、新規供給の一部を相殺し、現在のタイトなオフィス需給を支える要因のひとつになっている。最近は、世界的なリスク拡大による海外資金の収縮や、円高転換を受けたインバウンド宿泊需要の減退も考えられるものの、中期的には、これらのインバウンド需要はオフィス需給を継続的に下支えするものと考えられる。
このように、東京の賃貸オフィス市場は、海外資金の流入やインバウンド宿泊需要の拡大から間接的に恩恵を受けているといえる。
4 増宮守「シドニーのオフィス市場~海外資金による取得は高水準、日本の投資家にとっても魅力的~」ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2016年5月25日
5 (図表-3)は、オーストラリア全国の鑑定評価額データである。実際の取引価格をシドニー限定でみた場合、さらに住宅価格の上昇は顕著と考えられる。
6 大連の万達集団や上海の九龍投資集団などがシドニーのオフィスビルを取得し、住宅開発を予定。その他、中国の不動産会社がシドニー郊外で大規模な住宅開発を手掛けるケースもみられる。
(2016年06月30日「不動産投資レポート」)
増宮 守
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