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2016年04月26日
欧州大手保険グループの2015年決算状況について-低金利環境下での各社の生命保険事業の地域別の業績や収益状況はどうだったのか-
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(2)2014年との比較
2014年との比較では、欧州での進展率が低く、アジア・太平洋を中心としたその他の地域での進展率が高くなっている。2015年については、米国での進展率が高いものとなっているが、これは米ドルがユーロやポンドに対して強くなったという為替レートによる影響が大きい。

このように、会社全体の数値を前年と比較する場合においては、為替レートの変化による影響も小さくないことに注意が必要になる。因みに、主要通貨間の為替レートは、以下の通りとなっている。

これにより、例えば、AXA 、Allianzの米国事業の進展率は、現地通貨の米ドルベースでみるよりも、1割程度高くなっている等、ユーロ建の会社の報告数値にはプラスになっている。一方で、米ドルが主要通貨、特に中南米の通貨に対して強くなっていることから、米ドル建のZurichの報告数値が他社に比べてあまり芳しくないようにみえる要因になっている。
2-2.営業利益の状況
次に、営業利益の地域別内訳を見てみる。地域別の利益配分等にも各社毎の考え方が反映されている要素もあるが、各国における子会社毎や各社間の収益状況の差異等を一定程度比較できるものと考えられる。
(1)2015年の結果
大きくは、保険料と傾向は変わらないが、営業利益ベースでは、AXAにおいて、米国とアジアの構成比がさらに高くなっており、これら2つの地域で45%を占めている。Allianzにおいても、米国の構成比が22%と高くなっているが、一方でアジアの営業利益はマイナスとなっている。Prudentialにおいては、アジアの構成比が30%となり、極めて高い位置付けを有する形になっている。
このように営業利益ベースでみると、米国事業を有する各社においては、そのグループ内での位置付けがさらに高いものとなっている。アジア・太平洋については、保険料規模の大きいAXAやPridentialと、AllianzやGeneraliとは状況が異なっている。いずれにしても、営業利益においても、各社とも、自国以外での営業利益の構成比が6割から8割となり、重要な位置付けを占めてきている。

(2)2014年との比較
2014年との比較では、ほぼ各社とも各地域で営業利益を伸ばしているが、Allianz のアジア・太平洋とGeneraliのイタリアが対前年でマイナスとなっている。この理由については、3で説明する。
なお、営業利益の前年との比較を見る上においても、保険料の項目で述べたように、為替レートの影響を考慮する必要がある。
2014年との比較では、欧州での進展率が低く、アジア・太平洋を中心としたその他の地域での進展率が高くなっている。2015年については、米国での進展率が高いものとなっているが、これは米ドルがユーロやポンドに対して強くなったという為替レートによる影響が大きい。

このように、会社全体の数値を前年と比較する場合においては、為替レートの変化による影響も小さくないことに注意が必要になる。因みに、主要通貨間の為替レートは、以下の通りとなっている。

これにより、例えば、AXA 、Allianzの米国事業の進展率は、現地通貨の米ドルベースでみるよりも、1割程度高くなっている等、ユーロ建の会社の報告数値にはプラスになっている。一方で、米ドルが主要通貨、特に中南米の通貨に対して強くなっていることから、米ドル建のZurichの報告数値が他社に比べてあまり芳しくないようにみえる要因になっている。
2-2.営業利益の状況
次に、営業利益の地域別内訳を見てみる。地域別の利益配分等にも各社毎の考え方が反映されている要素もあるが、各国における子会社毎や各社間の収益状況の差異等を一定程度比較できるものと考えられる。
(1)2015年の結果
大きくは、保険料と傾向は変わらないが、営業利益ベースでは、AXAにおいて、米国とアジアの構成比がさらに高くなっており、これら2つの地域で45%を占めている。Allianzにおいても、米国の構成比が22%と高くなっているが、一方でアジアの営業利益はマイナスとなっている。Prudentialにおいては、アジアの構成比が30%となり、極めて高い位置付けを有する形になっている。
このように営業利益ベースでみると、米国事業を有する各社においては、そのグループ内での位置付けがさらに高いものとなっている。アジア・太平洋については、保険料規模の大きいAXAやPridentialと、AllianzやGeneraliとは状況が異なっている。いずれにしても、営業利益においても、各社とも、自国以外での営業利益の構成比が6割から8割となり、重要な位置付けを占めてきている。

(2)2014年との比較
2014年との比較では、ほぼ各社とも各地域で営業利益を伸ばしているが、Allianz のアジア・太平洋とGeneraliのイタリアが対前年でマイナスとなっている。この理由については、3で説明する。
なお、営業利益の前年との比較を見る上においても、保険料の項目で述べたように、為替レートの影響を考慮する必要がある。

3―欧州大手保険グループの決算状況-各社別-
ここでは、欧州大手保険グループ各社の生命保険事業について、保険料、営業利益に加えて、資産、EV(Embedded Value)7及び新契約価値の状況を地域別に報告する。
さらに、低金利環境下での投資関係損益を巡る状況や新契約の収益率等の状況を、各社毎に得られる情報に基づいて、報告する。
1|AXA
(1)地域別の業績-2015年の結果-
AXAの営業利益は、1)自国のフランス、2)自国以外の欧州、3)米国、4)日本を含むアジア、の4地域でそれぞれほぼ1/4程度を占めている。
Annual Reportによれば、収入保険料や新契約保険料等の規模で、自国のフランスでのシェアは8.9%で第3位であるものの、最大の米国市場では、AXAの子会社グループは、2015年末の認容資産ベースで、生命保険・健康保険グループで第13位となっている8。さらに、スイスやベルギーに加えてインドネシアやタイ等で10%程度及び10%を超えるシェアを有して、トップ3の会社となっている。
なお、新契約価値ベースでみると、日本を含むアジアが4割を超える構成比となっている。

(2)地域別の業績-2014年との比較-
2014年との比較では、全体でも増収増益であるだけでなく、各地域において営業利益や新契約価値を順調に増加させている。特にアジアにおいては、各項目で2割程度の高い進展率となっている。
グループ全体として、会社の戦略に対応する形で、一般勘定の貯蓄性商品の販売は芳しくなかったが、ユニットリンク型商品や保障・医療商品の販売が主要各国において好調だったことから、新契約が進展している。こうしたプロダクト・ミックスの推進により、低金利の影響を受けながらも、ユーロ安の効果もあって、営業収益は10%の進展を達成している。

(3)投資関係損益を巡る状況
AXAは、投資スプレッドの状況を、会社全体及び主要国別に、保有・新契約ベースで開示している。
金利低下で保有資産利回りは低下してきているが、一方で新契約の保証利率も低下させてきているため、その差額としての保有契約のスプレッドについては、グループ全体で160bps(2014年は160bp、以下同様)と高い水準を確保している。これから経費等を差し引いた投資マージンは79bps(80bps)となっている。
なお、AXAの固定利付資産のデュレーションは8.0年で、長期化を進めてきたことから、この5年間での保有利回りの低下は40bps(4.0%→3.6%)に止まっている、としている。
一方で、新契約ベースでは、再投資利回りの低下により、スプレッドは160bps(230bps)に低下している。
国別に見た場合、例えば、本国のフランスでは、1998年に長期保証付一般勘定貯蓄性商品の新契約販売を停止しており、さらに、貯蓄性商品については、一般勘定における貯蓄性商品から、高い新契約価値を有するユニットリンク型商品へシフトさせてきているため、新契約の平均保証利率は0.0%となっている。この結果として、保有ベースで320bps(310bps)、新契約ベースで200bps(240bps)と、引き続き高いスプレッドを確保している。
一方で、ドイツについては、平均保証利率が3.3%と高いことからと、保有契約のスプレッドは40bps(40bps)と他の国に比べて、低い水準となっている。ただし、新契約ベースでは、保証水準を低下させた商品を販売してきていることから、130bps(120bps)のスプレッドを確保している。

なお、AXAのグループ全体の商品ポートフォリオの推移と新契約価値マージンは、以下の通りとなっている。このような商品シフトにより、現在のような低金利下においても、販売や収益への影響を相対的に軽減できる対策を講じてきている。

(4) 資本収益率(ROE)の状況
AXAは、EV レポートの中で資本収益率(ROE)を開示しているが、その地域別の状況は以下の通りである。これによれば、アジアや中南米等の新興地域での資本収益率が相対的に高くなっている。
7 欧州大手保険グループは、EEV(ヨーロピアンEV)とMCEV(市場整合的EV)のいずれかに基づくEV(Embedded Value:エンベデッド・バリュー)を公表している。
8 AM Best社のデータに基づく(以下、同様)。
さらに、低金利環境下での投資関係損益を巡る状況や新契約の収益率等の状況を、各社毎に得られる情報に基づいて、報告する。
1|AXA
(1)地域別の業績-2015年の結果-
AXAの営業利益は、1)自国のフランス、2)自国以外の欧州、3)米国、4)日本を含むアジア、の4地域でそれぞれほぼ1/4程度を占めている。
Annual Reportによれば、収入保険料や新契約保険料等の規模で、自国のフランスでのシェアは8.9%で第3位であるものの、最大の米国市場では、AXAの子会社グループは、2015年末の認容資産ベースで、生命保険・健康保険グループで第13位となっている8。さらに、スイスやベルギーに加えてインドネシアやタイ等で10%程度及び10%を超えるシェアを有して、トップ3の会社となっている。
なお、新契約価値ベースでみると、日本を含むアジアが4割を超える構成比となっている。

(2)地域別の業績-2014年との比較-
2014年との比較では、全体でも増収増益であるだけでなく、各地域において営業利益や新契約価値を順調に増加させている。特にアジアにおいては、各項目で2割程度の高い進展率となっている。
グループ全体として、会社の戦略に対応する形で、一般勘定の貯蓄性商品の販売は芳しくなかったが、ユニットリンク型商品や保障・医療商品の販売が主要各国において好調だったことから、新契約が進展している。こうしたプロダクト・ミックスの推進により、低金利の影響を受けながらも、ユーロ安の効果もあって、営業収益は10%の進展を達成している。

(3)投資関係損益を巡る状況
AXAは、投資スプレッドの状況を、会社全体及び主要国別に、保有・新契約ベースで開示している。
金利低下で保有資産利回りは低下してきているが、一方で新契約の保証利率も低下させてきているため、その差額としての保有契約のスプレッドについては、グループ全体で160bps(2014年は160bp、以下同様)と高い水準を確保している。これから経費等を差し引いた投資マージンは79bps(80bps)となっている。
なお、AXAの固定利付資産のデュレーションは8.0年で、長期化を進めてきたことから、この5年間での保有利回りの低下は40bps(4.0%→3.6%)に止まっている、としている。
一方で、新契約ベースでは、再投資利回りの低下により、スプレッドは160bps(230bps)に低下している。
国別に見た場合、例えば、本国のフランスでは、1998年に長期保証付一般勘定貯蓄性商品の新契約販売を停止しており、さらに、貯蓄性商品については、一般勘定における貯蓄性商品から、高い新契約価値を有するユニットリンク型商品へシフトさせてきているため、新契約の平均保証利率は0.0%となっている。この結果として、保有ベースで320bps(310bps)、新契約ベースで200bps(240bps)と、引き続き高いスプレッドを確保している。
一方で、ドイツについては、平均保証利率が3.3%と高いことからと、保有契約のスプレッドは40bps(40bps)と他の国に比べて、低い水準となっている。ただし、新契約ベースでは、保証水準を低下させた商品を販売してきていることから、130bps(120bps)のスプレッドを確保している。

なお、AXAのグループ全体の商品ポートフォリオの推移と新契約価値マージンは、以下の通りとなっている。このような商品シフトにより、現在のような低金利下においても、販売や収益への影響を相対的に軽減できる対策を講じてきている。

(4) 資本収益率(ROE)の状況
AXAは、EV レポートの中で資本収益率(ROE)を開示しているが、その地域別の状況は以下の通りである。これによれば、アジアや中南米等の新興地域での資本収益率が相対的に高くなっている。

7 欧州大手保険グループは、EEV(ヨーロピアンEV)とMCEV(市場整合的EV)のいずれかに基づくEV(Embedded Value:エンベデッド・バリュー)を公表している。
8 AM Best社のデータに基づく(以下、同様)。
(2016年04月26日「基礎研レポート」)
中村 亮一のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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2025/05/02 | 曲線にはどんな種類があって、どう社会に役立っているのか(その11)-螺旋と渦巻の実例- | 中村 亮一 | 研究員の眼 |
2025/04/25 | 欧州大手保険グループの2024年の生命保険新契約業績-商品タイプ別・地域別の販売動向・収益性の状況- | 中村 亮一 | 基礎研レポート |
2025/04/14 | 欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2024年決算数値等に基づく現状分析- | 中村 亮一 | 基礎研レポート |
2025/04/01 | 欧州大手保険グループの2024年末SCR比率等の状況-ソルベンシーII等に基づく数値結果報告と資本管理等に関係するトピック- | 中村 亮一 | 基礎研レポート |
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