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2016年04月12日
欧州大手保険グループの2015年末SCR比率の状況について-ソルベンシーIIに基づく数値結果報告-
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■要旨
欧州大手保険グループの2015年決算の発表が3月に行われており、それに伴い、新たなソルベンシーII制度に基づく各種数値等も開示されているので、今回の保険・年金フォーカスでは、各社の2015年末のSCR比率の状況等について報告する。
基礎研レター「EUソルベンシーIIの動向-各社のSCR算出のための内部モデルの適用申請等はどのような結果になったのか(2)-」(2016.2.1)において、欧州大手保険グループのSCR比率及び内部モデルの適用状況について報告したが、その段階では公表内容の時期等が統一されていなかった。今回は各社とも2015年末の数値を公表しているので、その意味では同一ベースでの比較を行った形となっている。
■目次
1―はじめに
2―欧州大手保険グループの各社間比較
3―各社のSCR比率や内部モデルの適用状況等
4―各社の自己資本やSCRの内訳
5―その他の各社毎の補足情報
6―まとめ
欧州大手保険グループの2015年決算の発表が3月に行われており、それに伴い、新たなソルベンシーII制度に基づく各種数値等も開示されているので、今回の保険・年金フォーカスでは、各社の2015年末のSCR比率の状況等について報告する。
基礎研レター「EUソルベンシーIIの動向-各社のSCR算出のための内部モデルの適用申請等はどのような結果になったのか(2)-」(2016.2.1)において、欧州大手保険グループのSCR比率及び内部モデルの適用状況について報告したが、その段階では公表内容の時期等が統一されていなかった。今回は各社とも2015年末の数値を公表しているので、その意味では同一ベースでの比較を行った形となっている。
■目次
1―はじめに
2―欧州大手保険グループの各社間比較
3―各社のSCR比率や内部モデルの適用状況等
4―各社の自己資本やSCRの内訳
5―その他の各社毎の補足情報
6―まとめ
1―はじめに
欧州大手保険グループの2015年決算の発表が3月に行われており、それに伴い、新たなソルベンシーII制度に基づく各種数値等も開示されているので、今回の保険・年金フォーカスでは、各社の2015年末のSCR比率の状況等について報告する。
基礎研レター「EUソルベンシーIIの動向-各社のSCR算出のための内部モデルの適用申請等はどのような結果になったのか(2)-」(2016.2.1)において、欧州大手保険グループのSCR比率及び内部モデルの適用状況について報告したが、その段階では公表内容の時期等が統一されていなかった。今回は各社とも2015年末の数値を公表しているので、その意味では同一ベースでの比較を行った形となっている。
基礎研レター「EUソルベンシーIIの動向-各社のSCR算出のための内部モデルの適用申請等はどのような結果になったのか(2)-」(2016.2.1)において、欧州大手保険グループのSCR比率及び内部モデルの適用状況について報告したが、その段階では公表内容の時期等が統一されていなかった。今回は各社とも2015年末の数値を公表しているので、その意味では同一ベースでの比較を行った形となっている。
2―欧州大手保険グループの各社間比較
前回のレターで述べたように、大手保険グループについては、内部モデルを使用することにより、グループ全体でのSCR(ソルベンシー資本要件:Solvency Capital Requirement)を有意なレベルで軽減することができることから、各社とも内部モデルを使用している。
前回のレターを報告した2月1日の時点では、イタリアのGeneraliが未だ内部モデルの使用の承認について公表していなかったが、2015年決算発表の時点では、Generaliを含めた主要大手保険Gが全て、監督当局からの承認を得た内部モデルに基づくSCR比率(=自己資本/SCR)を公表している。
今回の保険・年金フォーカスでは、元受保険会社に対象を絞って、各社のプレス・リリース資料や投資家・アナリスト向けの説明会資料等に基づいて、SCR比率の状況や内部モデルの適用状況及び自己資本やSCRの内訳等を報告することにする。
なお、前回のレターで述べたように、今回の各社のプレス・リリース等においても、ソルベンシーIIに基づく算出方法等については、引き続き監督当局と交渉中の項目等もあり、その意味では、今回発表しているSCR比率等の情報も、あくまでも現段階の数値である。今後、例えば、さらに内部モデルの対象範囲の拡大や算出方法の変更の可能性があること等については留意しておく必要がある。
前回のレターを報告した2月1日の時点では、イタリアのGeneraliが未だ内部モデルの使用の承認について公表していなかったが、2015年決算発表の時点では、Generaliを含めた主要大手保険Gが全て、監督当局からの承認を得た内部モデルに基づくSCR比率(=自己資本/SCR)を公表している。
今回の保険・年金フォーカスでは、元受保険会社に対象を絞って、各社のプレス・リリース資料や投資家・アナリスト向けの説明会資料等に基づいて、SCR比率の状況や内部モデルの適用状況及び自己資本やSCRの内訳等を報告することにする。
なお、前回のレターで述べたように、今回の各社のプレス・リリース等においても、ソルベンシーIIに基づく算出方法等については、引き続き監督当局と交渉中の項目等もあり、その意味では、今回発表しているSCR比率等の情報も、あくまでも現段階の数値である。今後、例えば、さらに内部モデルの対象範囲の拡大や算出方法の変更の可能性があること等については留意しておく必要がある。
3―各社のSCR比率や内部モデルの適用状況等
まずは、各社のSCR比率や内部モデルの適用状況等の概要を、次ページの図表の通りにまとめている。
この図表から見てとれるように、欧州の大手保険グループの間でも、SCRの算出方法等が統一されているわけではない。そのため、表面上のSCR比率の水準だけを比較することは必ずしも適切とはいえないが、各社のSCR比率の算出方法等の考え方を比較してみることは意味があるものと考えられる。
(1)SCR比率
SCR比率の目標範囲については、AllianzとAXAは200%をベースに設定している。Aegonの目標範囲が他社に比較して低いのは、オランダにおいて各種の長期保証措置の適用を行っていないこと等が1つの要因となっている。Generaliは経営行動を起こす下限水準のみを公表している。Prudentialは各セグメント毎に目標を設定している。
(2)SCR等の算出方法(内部モデルの適用状況)
Allianz及びAegonが部分内部モデルを使用している、としている。なお、完全モデルとはいっても、銀行業務等については、適用可能な規制制度に基づいて算出している。
内部モデルの適用対象については、母国に加えて、欧州の主要国やアジア等、実質的に米国を除く主要事業国を含めているケースが多い。米国については各社とも同等性評価に基づいている。内部モデル適用比率の違いは、米国子会社のウェイトの差によるものが大きい。ただし、米国子会社の資本要件のSCRへの反映方法である「転換率」1については、150%~300%と幅がある形になっている。
(3) SCR等の算出方法(長期保証措置の適用状況)
ソルベンシーIからソルベンシーIIへの移行における割引率や技術的準備金についての16年間にわたる経過措置、MA(マッチング調整)及びVA(ボラティリティ調整)といった長期保証措置2の適用については、各国の保険市場の特徴(販売商品や資産運用市場等)に大きく依存している。ここでは、母国市場での適用状況だけを示しているため、この図表に記載されている内容だけでは、適正な比較はできない面もある。
さらに、この図表には記載されていないが、例えば、英国における事業についてみた場合、「Prudentialは技術的準備金に関する経過措置とMAを適用しているが、AXAの英国子会社はVAのみを、Aegonの子会社は経過措置、MA、VAの全てを適用している」というように、各社の置かれている状況等によって、長期保証措置の適用方針は異なっている。
(4)SCR比率の感応度
SCR比率の感応度については、各社とも低下させる方向で対応してきている。この結果として、欧州大手保険グループの市場の変動に対する感応度はかなり低いものとなっている。
なお、各社の感応度のシナリオも統一されているわけではない。
この図表から見てとれるように、欧州の大手保険グループの間でも、SCRの算出方法等が統一されているわけではない。そのため、表面上のSCR比率の水準だけを比較することは必ずしも適切とはいえないが、各社のSCR比率の算出方法等の考え方を比較してみることは意味があるものと考えられる。
(1)SCR比率
SCR比率の目標範囲については、AllianzとAXAは200%をベースに設定している。Aegonの目標範囲が他社に比較して低いのは、オランダにおいて各種の長期保証措置の適用を行っていないこと等が1つの要因となっている。Generaliは経営行動を起こす下限水準のみを公表している。Prudentialは各セグメント毎に目標を設定している。
(2)SCR等の算出方法(内部モデルの適用状況)
Allianz及びAegonが部分内部モデルを使用している、としている。なお、完全モデルとはいっても、銀行業務等については、適用可能な規制制度に基づいて算出している。
内部モデルの適用対象については、母国に加えて、欧州の主要国やアジア等、実質的に米国を除く主要事業国を含めているケースが多い。米国については各社とも同等性評価に基づいている。内部モデル適用比率の違いは、米国子会社のウェイトの差によるものが大きい。ただし、米国子会社の資本要件のSCRへの反映方法である「転換率」1については、150%~300%と幅がある形になっている。
(3) SCR等の算出方法(長期保証措置の適用状況)
ソルベンシーIからソルベンシーIIへの移行における割引率や技術的準備金についての16年間にわたる経過措置、MA(マッチング調整)及びVA(ボラティリティ調整)といった長期保証措置2の適用については、各国の保険市場の特徴(販売商品や資産運用市場等)に大きく依存している。ここでは、母国市場での適用状況だけを示しているため、この図表に記載されている内容だけでは、適正な比較はできない面もある。
さらに、この図表には記載されていないが、例えば、英国における事業についてみた場合、「Prudentialは技術的準備金に関する経過措置とMAを適用しているが、AXAの英国子会社はVAのみを、Aegonの子会社は経過措置、MA、VAの全てを適用している」というように、各社の置かれている状況等によって、長期保証措置の適用方針は異なっている。
(4)SCR比率の感応度
SCR比率の感応度については、各社とも低下させる方向で対応してきている。この結果として、欧州大手保険グループの市場の変動に対する感応度はかなり低いものとなっている。
なお、各社の感応度のシナリオも統一されているわけではない。
1 米国RBCのCAL(会社行動水準:Company Action Level)の何%がソルベンシーIIによるSCR比率の100%に相当するのかを示す率
2 長期保証措置(経過措置を含む)の内容については、筆者による、基礎研レター「EUソルベンシーIIの動向-長期保証措置(MA・VA・経過措置)の適用申請・承認等の状況はどのようになっているのか-」(2015.10.13)を参照していただきたい。
(2016年04月12日「保険・年金フォーカス」)
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