- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 暮らし >
- 芸術文化 >
- ロシア見聞録(その2)-「芸術の都」サンクトペテルブルク
エルミタージュ美術館は、「冬宮」の他に小・旧・新エルミタージュと劇場の5つの建物で構成される。昨年には印象派の作品を主に展示する新館が、宮殿広場の向い側の旧参謀本部をリノベーションして新たに開館した。収蔵する作品は、レンブラント、ルーベンス、ラファエロ、ダ・ヴィンチ、セザンヌ、ピカソ、ゴーギャン、マチスなど約300万点に上る。展示されている絵画や彫刻はもちろん、美術館自体が素晴らしい建築作品で、美術館の内装も優れた芸術品であることを忘れてはならないだろう。
私はエルミタージュ美術館の代表作品のひとつであるレンブラントの『放蕩息子の帰還』を観た時、これほど巧みに光を描けるものかと感動した。絵画はどのような額に入れるか、額装によって印象が随分変わるが、更にどのような部屋に展示されるかによっても変化する。エルミタージュ美術館では素晴らしい絵画が素晴らしい展示室と協奏し、その作品価値を一層高めているように思える。
北緯60度に位置するサンクトペテルブルクの冬は厳しく、私が訪れた3月でも市内を走る川や運河は全て凍っていた。冬季は日照時間も短く観光客は少ないが、現地のロシア人ガイドによると冬こそエルミタージュのベストシーズンだと言う。なぜなら夏の観光シーズンには長い行列ができ、有名な絵画の前は人垣のために、それらをゆっくり鑑賞することもままならないからだ。
サンクトペテルブルクにはバレエやオペラ専用の劇場が数多くある。1783年開場のマリインスキー劇場や1832年開場のアレクサンドリンスキー劇場は、帝政ロシア時代からの伝統ある劇場で、これらが立地する歴史地区はユネスコの世界文化遺産に登録されている。サンクトペテルブルクでは、街のあちこちで伝統的建造物の修復工事が行われており、計画的に歴史的景観の保存が図られている。
社会主義のソ連が崩壊して四半世紀が経過し、資本主義に転換したロシア経済はエネルギー資源の輸出に大きく依存している。今後の持続的経済成長には脱石油が求められているが、年間3,200万人の外国人が訪れる観光は重要な産業のひとつだ。ロシアが更なる近代化に向けて、市場経済のなかで「芸術の都」サンクトペテルブルクの歴史と文化をどのように守ってゆくのか注目される。(つづく)
土堤内 昭雄
研究・専門分野
(2016年04月05日「研究員の眼」)
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年04月18日
サイレントマジョリティ⇒MAGAで熱狂-米国大統領選挙でリベラルの逆サイレントマジョリティはあるか- -
2024年04月18日
「新築マンション価格指数」でみる東京23区のマンション市場動向【2023年】(1)~東京23区の新築マンション価格は前年比9%上昇。資産性を重視する傾向が強まり、都心は+13%上昇、タワーマンションは+12%上昇 -
2024年04月17日
IMF世界経済見通し-24年の見通しをやや上方修正 -
2024年04月17日
不透明感が高まる米国産LNG(液化天然ガス)輸入 -
2024年04月17日
英国雇用関連統計(24年3月)-失業率は増加し、雇用者数も減少
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
【ロシア見聞録(その2)-「芸術の都」サンクトペテルブルク】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
ロシア見聞録(その2)-「芸術の都」サンクトペテルブルクのレポート Topへ