コラム
2015年04月07日

新たな「価値観」の発見-旅の「原石」を「宝石」に!

土堤内 昭雄

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私にとって若い頃の海外旅行と言えば、興味を持つ“建築”をひとり気ままに巡る旅が中心だった。しかし、還暦を過ぎた現在は、添乗員が同行するグループツアーに参加する機会が多い。その理由は、私が、最近の旅先であるイスラム諸国の言葉や状況にあまり明るくないこと、旅行中に多くの人たちと会話や食事を楽しみたいことなどによる。同じ旅の中で、複数の参加者の目を通して物事をみると、異なる価値観に気づかされることも、グループツアーの大きな魅力のひとつだと思う。

旅行の日程が1週間以上に及ぶと、時間にゆとりのある中高年層が多い。最近旅した北アフリカのモロッコ旅行でも、多くが定年退職前後の中高年夫婦だった。参加の動機を聞くと、『体力と好奇心があるうちに海外旅行を楽しんでおきたい』という人が多かった。食事中の会話などでは、私をはじめ定年を控えた中高年男性のライフスタイルを考える上でも、とても貴重な話を聞く事ができた。

添乗員同行のツアーでは、彼ら彼女らの体験談を聞く機会もある。今回の旅行の添乗員Sさんは、年間250日あまりを海外で過ごし、これまで70か国以上を訪れているという。若い頃にアメリカなどを旅するうちに経験したことのない様々な価値観に遭遇した結果、多くの国を旅することでより多様な価値観を知りたいと思って添乗員になったそうだ。

イスラム圏を旅してみると、自分の日常生活がいかに欧米の合理主義的な価値観に支配されているかがわかる。別にイスラム諸国の価値観に染まるわけではないが、多様な視点を持つほどに、社会や家族の在り方、豊かさや幸せとは何かについて、深く考えさせられる。今回の旅先では、時間は太陽の動きと共に進み、食事は家族の間で共有され、人間は家畜と自然と共に信仰の中で生きていた。

モロッコの旅では、赤ちゃんを背負った若い母親から「施し」を求められることが何度かあったが、ツアーの現地ガイドは、さりげなくお金を渡していた。イスラム教徒には、5つの重要な勤めがあり、そのひとつが「喜捨」、即ち恵まれない人に対する「施し」だ。もちろん、日本にも寄付文化はあるが、欧米風に『寄付による税控除はあるか』などと、つい考えてしまう。モロッコの街角での「喜捨」は、私にとって、何か「共助社会」の原点を見るような思いがしたのだった。

Sさんは、様々な原体験を通じて発見した旅の「原石」を、参加者自身が磨いて「宝石」にして欲しいと話していた。私自身も今回のモロッコ旅行では日常生活と異なる多くの体験をし、新たな「価値観」の発見があった。それらを今後のライフデザインに活かしたいと思っている。
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研究・専門分野

(2015年04月07日「研究員の眼」)

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