- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 暮らし >
- 消費者行動 >
- “温泉”の異文化共生-求められる「ラグビー型」の国際化
コラム
2015年11月02日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
ラグビーワールドカップ2015イングランド大会が今年9月に開幕し、日本チームの大躍進が注目を集めた。これまでサッカーのワールドカップに比べると、試合のテレビ中継やニュース番組での報道などは少なく、日本国内の人々の関心が薄かったことは否めない。今大会で初めてラグビーに興味を持った人も大勢いると思うが、日本代表チームを見て外国人選手の多さに気付いた人も多いだろう。
今大会の日本代表選手31名のうち外国出身選手は10名で、5名は日本国籍を取得しているそうだ。ラグビーW杯のルールでは、ナショナルチームの選手になるのに当該国籍は必ずしも必要ではなく、本人が3年以上継続して当該国に居住していればよい。サッカーの場合は多くの日本人選手が海外で活躍しており、W杯のナショナルチームは海外組の選手を多く揃えた国産型であり、ラグビーW杯のチーム編成は日本国内で活躍する多くの外国出身選手を含む多国籍型と言えよう。
最近、訪日外国人が急増し、インバウンド消費が東京や京都だけでなく日本全国に広がっているが、そこで新たな問題が生じている。各地の温泉でのタトゥーのある外国人観光客への対応だ。日本では「入れ墨お断り」が原則で、多くの日本人はタトゥーを入れた外国人の入浴には戸惑いがある。しかし、外国人にとってのタトゥーは、ファッションであったり宗教的な意味であったりと、われわれの理解とは大きく異なることも多く、単純に拒否することもできない。
また、訪日目的のひとつに温泉を楽しむことを挙げる外国人も多い。温泉によってはタトゥー部分にシールを貼るなどの対応を求めたり、タトゥーのある人の入浴時間を別に設ける温泉もあると聞く。日本では「入れ墨が反社会的なもの」という認識が強いために、温泉でタトゥーを忌避する国民感情があることも丁寧に説明する必要があるが、同時に異文化を理解し、異文化と共生する方法を模索することが極めて重要だろう。
2019年にはラグビーW杯が、2020年には東京オリンピック・パラリンピックが日本で開催される。一層多くの訪日外国人が見込まれ、タトゥーをした人も大勢来日するだろう。これまで日本が進めてきた国際化は主にアウトバウンド型であり、多様な異文化との共生が必要なインバウンド型の国際化はまだまだ不十分だ。「郷に入りては郷に従え」という教えもあるが、インバウンドの国際化は『日本のルールにすべて合わせてくれ』では通用しない。多様な異文化を理解し、それを受容れる寛容性が重要だ。これからの日本にとって一層求められるのは「ラグビー型」の国際化ではないだろうか。
(参考) 研究員の眼『「観光立国」目指す“おもてなし”~異文化理解から始めよう!』(2014年6月23日)
今大会の日本代表選手31名のうち外国出身選手は10名で、5名は日本国籍を取得しているそうだ。ラグビーW杯のルールでは、ナショナルチームの選手になるのに当該国籍は必ずしも必要ではなく、本人が3年以上継続して当該国に居住していればよい。サッカーの場合は多くの日本人選手が海外で活躍しており、W杯のナショナルチームは海外組の選手を多く揃えた国産型であり、ラグビーW杯のチーム編成は日本国内で活躍する多くの外国出身選手を含む多国籍型と言えよう。
最近、訪日外国人が急増し、インバウンド消費が東京や京都だけでなく日本全国に広がっているが、そこで新たな問題が生じている。各地の温泉でのタトゥーのある外国人観光客への対応だ。日本では「入れ墨お断り」が原則で、多くの日本人はタトゥーを入れた外国人の入浴には戸惑いがある。しかし、外国人にとってのタトゥーは、ファッションであったり宗教的な意味であったりと、われわれの理解とは大きく異なることも多く、単純に拒否することもできない。
また、訪日目的のひとつに温泉を楽しむことを挙げる外国人も多い。温泉によってはタトゥー部分にシールを貼るなどの対応を求めたり、タトゥーのある人の入浴時間を別に設ける温泉もあると聞く。日本では「入れ墨が反社会的なもの」という認識が強いために、温泉でタトゥーを忌避する国民感情があることも丁寧に説明する必要があるが、同時に異文化を理解し、異文化と共生する方法を模索することが極めて重要だろう。
2019年にはラグビーW杯が、2020年には東京オリンピック・パラリンピックが日本で開催される。一層多くの訪日外国人が見込まれ、タトゥーをした人も大勢来日するだろう。これまで日本が進めてきた国際化は主にアウトバウンド型であり、多様な異文化との共生が必要なインバウンド型の国際化はまだまだ不十分だ。「郷に入りては郷に従え」という教えもあるが、インバウンドの国際化は『日本のルールにすべて合わせてくれ』では通用しない。多様な異文化を理解し、それを受容れる寛容性が重要だ。これからの日本にとって一層求められるのは「ラグビー型」の国際化ではないだろうか。
(参考) 研究員の眼『「観光立国」目指す“おもてなし”~異文化理解から始めよう!』(2014年6月23日)
(2015年11月02日「研究員の眼」)
土堤内 昭雄
土堤内 昭雄のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2018/12/20 | 「定年退社」します!-「生涯現役」という人生の「道楽」 | 土堤内 昭雄 | 研究員の眼 |
2018/11/28 | 「人生100年時代」の暮らし方-どう過ごす?! 定年後の「10万時間」 | 土堤内 昭雄 | 基礎研レポート |
2018/11/27 | 「平成」の30年を振り返って-次世代へのメッセージは、「レジリエントな社会づくり」 | 土堤内 昭雄 | 研究員の眼 |
2018/10/23 | 「幸せ」実感できぬ社会-豊かな時代のあらたな課題 | 土堤内 昭雄 | 研究員の眼 |
新着記事
-
2025年05月02日
金利がある世界での資本コスト -
2025年05月02日
保険型投資商品等の利回りは、良好だったが(~2023 欧州)-4年通算ではインフレ率より低い。(EIOPAの報告書の紹介) -
2025年05月02日
曲線にはどんな種類があって、どう社会に役立っているのか(その11)-螺旋と渦巻の実例- -
2025年05月02日
ネットでの誹謗中傷-ネット上における許されない発言とは? -
2025年05月02日
雇用関連統計25年3月-失業率、有効求人倍率ともに横ばい圏内の動きが続く
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【“温泉”の異文化共生-求められる「ラグビー型」の国際化】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
“温泉”の異文化共生-求められる「ラグビー型」の国際化のレポート Topへ