コラム
2014年06月23日

「観光立国」目指す“おもてなし”-異文化理解から始めよう!

土堤内 昭雄

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2013年の訪日外客数は1,036万人と初めて一千万人を突破した*。そのうち観光客796万人、商用客146万人だ。国籍別では、韓国246万人、台湾221万人、中国131万人と、アジア諸国からが812万人で全体の8割近くを占めている。2013年「世界観光ランキング」では、日本の国際観光客到着数は世界27位、トップのフランスの8分の1程度だ。日本は観光立国としては、まだまだ発展途上である。

政府は2020年までに訪日外国人旅行者数2,000万人達成を目標に掲げ、昨年6月「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」を策定した。その中には東南アジアからの訪日促進のため、ムスリム旅行者に配慮した食事や礼拝スペースの確保などの受入環境の整備が記載されている。イスラム教で口にできる食品を「ハラル」というが、近頃では、日本国内にも「ハラル認証」を取得したレストランが開業したり、ハラル対応の食品を開発する食品メーカーが登場したりしている。

私は今年4月、アラブ首長国連邦のドバイに行った。初めてのイスラム教国への旅行だった。夜明け前に、祈りのためにモスクへいざなう「アザーン」が街中に響き渡り、目が覚めた。ホテルの部屋の天井には、イスラムの聖地メッカの方角を示す「キブラ」という表示があり、祈りのときに使う絨毯が置かれていた。世界一巨大なショッピングセンター「ドバイモール」では、男性は白い「カンドーラ」を、女性は全身を覆う黒い「アバーヤ」を着た人が大勢いた。ドバイは国際観光都市であり、イスラム教国の中では最も外国文化を許容している国のひとつだが、モールのパンフレットには、肩や膝などを露出した服装や過度の男女の愛情表現は控えるようにと書かれていた。

昔から『郷に入りては郷に従え』というが、訪日外国人をもてなすためには、異文化に対する尊敬と理解が不可欠だ。訪日したムスリム旅行者が、日本でごく普通の服装や飲酒をとても不愉快に感じるかもしれないことを、理解することも必要だ。先日、政府が公表した「アクション・プログラム2014」には、『日本の「ムスリムおもてなしの姿勢」を政府ハイレベルで発信する』と記されている。

東京五輪開催まであと6年。オリンピックというスポーツの祭典に参加するのは、主要な価値観を共有する国々ばかりとは限らない。異なる文化や習慣の中で暮らす多くの外国人観光客を受け入れるための「おもてなし」の準備には、競技施設などのインフラ整備以上に長い時間を要するかもしれない。今後、日本が「観光立国」を目指すには、訪日外国人に日本を理解してもらうための日本のアイデンティティ確立とともに、われわれ自身がさまざまな異文化を理解することから始めなければならない。




 
 日本政府観光局「訪日外客数の動向」より

(2014年06月23日「研究員の眼」)

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