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- 約款の数字 1から1095まで-第9回 「500万円」について(先進医療特約の支払限度額)
第9回のテーマは、先進的な医療技術である「先進医療」を受けた際の患者負担を保障する「先進医療特約」の支払限度額「500万円」について。
先進医療は、現時点でも健康保険の対象となっていないが、実は30年以上の長い歴史がある。
すなわち、1984年10月の健康保険法改正により、新しい医療技術の出現や、患者ニーズの多様化に対応する観点から、「特定療養費制度」として導入されたものである。
特定療養費制度とは、大学病院等の特定承認保健医療機関で行なわれる「高度先進医療」(健康保険の保険給付となっていない新しい高度な医療技術)の技術料相当部分については自己負担としつつ、入院・検査費用など基礎的部分については、特定療養費として保険給付する制度である1。
高度先進医療として承認後は、毎年の医療実績に基づき、新規保険適用(普及性、有効性、効率性、安全性、技術的成熟度で判断)、高度先進医療の承認継続、または承認取消のいずれとするか判断される2。
こうした状況の中、第8回でも紹介した1985年5月の保険審議会答申(60年答申)においては、「高度先進医療は高額であるほか長期の療養を要するものもあるので、民間保険へのニーズは強いと考えられる」として、民間医療保険での「高度先進医療」への保障提供が提言された3。
これを受け、1992年4月、千代田生命(現ジブラルタ生命)と富国生命が、共同開発により、高度先進医療の技術料相当部分を保障する「高度先進医療特約」を発売した。これが現在の先進医療特約の前身である。
高度先進医療特約は、自己負担となる高度先進医療の技術料に応じて、特約基本保険金額(500万円)の0.2%(技術料2万円以下)~100%(技術料500万円超)を支払う仕組みであった(通算500万円限度)4。
2006年10月の健康保険法改正により、特定療養費制度が廃止されて「保険外併用療養費制度」に変わり、従来の高度先進医療が新たな先進医療としてスタートした5。
これに伴い、高度先進医療特約は、先進医療特約として再構成された。
2007年11月には、三井住友海上きらめき生命(現三井住友海上あいおい生命)が、先進医療の技術料相当額を支払うという、生保初の実損填補型の先進医療特約を発売した(病院までの交通費の実額も保障。通算1000万円まで。2010年3月からは、さらに先進医療を受ける際の病院以外の宿泊費も保障)6。
現在の先進医療特約は、先進医療の技術料相当額を支払うという実損填補型が大半であり、その通算支払限度額は、当初の支払限度額である500万円から順次引き上げられ、現時点では500万円、1000万円、1500万円または2000万円となっている(1療養当たり500万円などの限度額を設定している会社もある)。
また、先進医療を受ける際の技術料のほか、前述の病院までの交通費・宿泊費の実額や、先進医療の技術料相当額の10%または一定の金額を加算して支払う例もある。
現在、先進医療特約を発売しているほとんどの生保会社のホームページにおいては、厚生労働省のホームページの「先進医療の各技術の概要」、「先進医療を実施している医療機関の一覧」などにリンクが行われている。
現時点では、先進医療は107種類となっている。
うち、技術料が高額であり、実施件数も比較的多いものとして、「陽子線治療」[限局性固形がんに対する先進医療、年間2170件、技術料約259万円、10医療機関で実施]、「重粒子線治療」[限局性固形がんに対する先進医療、年間1286件、技術料約304万円、4医療機関で実施]などがある7。
最近の動向としては、2015年5月に、先進的な治療についての患者の選択肢の拡大を企図して、「保険外併用療養費制度の中に新たな仕組みとして『患者申出療養』を創設する」などの内容を盛り込んだ国民健康保険法改正案が成立している(当該部分の法改正は2016年4月1日に施行予定)。
こうした動向を受け、保険会社の新たな取り組みが注目される。
(2015年10月05日「研究員の眼」)
小林 雅史
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