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- 約款の数字 1から1095まで-第7回 「90日」について(がん保険の不担保期間)
第7回のテーマは、がん保険やがんを保障する特約(がん特約)などでの「不担保期間」(責任開始の日から一定期間内にがんと診断確定されたときは、保険給付は支払われず、保険契約を無効とする取り扱い)である「90日」(3か月)。
がん保険は、現在ではポピュラーな商品となっているが、その発売は40年以上前にさかのぼる。
すなわち、1974年11月、アメリカンファミリー(アフラック)が日本進出2番目の外資系生保として、日本初のがん保険を発売した[なお、1973年2月のアリコジャパン(現メットライフ生命)による無配当保険発売が外資系生保の初の日本進出]。
当時、がんは「死に至る病」と認識され、がん保険の日本市場への定着を危惧する声もあったが、大方の予想に反し販売は急進展し、中小・外資系生保によるがん保険販売が続いた。
2001年1月には大手生保と損保の生保子会社に、2001年7月には損保本体にがん保険、医療保険などの販売が認められ、2013年度には生保会社43社中20社ががん保険を発売し、がん保険全体の保有契約は約2117万件と、全人口の6人に1人ががん保険に加入しているという普及状況となってい1。
こうしたがん保険やがん特約などで設定されているのが不担保期間である。
がん保険においては、たとえば乳房のしこりの発生などの具体的な自覚症状や、全般的な体調の不調などがありながら、医師の診察を受けていない状態で加入し、加入後に医師の診察を受けてがんであるとの診断確定を受けるというモラル・リスク発生の懸念がある。
また、被保険者ががんに罹患していても、がんであるとの告知を本人が受けていないケースもあり、保険加入時の告知によってもがんに罹患した被保険者を完全には排除できないおそれがある。
この2点の問題への対処が、がん保険における「不担保期間」設定の理由とされている2。
がん保険の発売以来設定されてきた不担保期間について、近年撤廃する動きもある。
2008年8月、アリコ・ジャパン(現メットライフ生命)は、日本ではじめて90日間の不担保期間のないがん保険を発売した(がん診断給付金などには不担保期間を設定)3。
ただ、現在でも不担保期間のないがん保険は少なく、ほとんどのがん保険において不担保期間が設定されている。
がん保険やがん特約以外にも、がんに対する保障について不担保期間が設定されている商品も発売されている。
1992年から発売された、がん・心筋梗塞・脳卒中の3大疾病への罹患について、死亡保障と同額の保障を提供する3大疾病保障保険(特定疾病保障保険)であり、がんに対する保障については90日の不担保期間が設定されている。
なお欧米では、3大疾病保障保険は販売されているが、日本におけるがん保険と同様の商品はほとんど販売されていない(不担保期間の取り扱いは区々)。
小林 雅史
研究・専門分野
(2015年08月31日「研究員の眼」)
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