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- 約款の数字 1から1095まで-第8回 「180日」について(介護保険の支払要件)
第8回のテーマは、公的介護保険を補完する民間介護保険の介護給付の支払要件である、「180日以上の所定の要介護状態の継続」を取り上げたい。
1985年1月、アメリカンファミリー(アフラック)から「認知症による要介護状態」を保障する「痴呆介護保険」が発売された1。
この発売の経緯については、1985年5月の保険審議会答申において、「痴呆性老人の介護の問題は社会的関心を集めているが、このような中にあって痴呆介護保険が開発され昭和60年1月から発売された」2と指摘されている。
そして、同答申では、「今後、寝たきり状態等をもカバーする介護保険へのニーズは一層高まるものと考えられ、生命保険会社もこれに前向きに対応していくべき」と指摘した。さらに、「痴呆性老人や寝たきり老人問題は、金銭給付だけでは真の問題解決とはならず、介護、福祉サービスの供給体制の整備が重要な課題であると言われるが、このような保険も一層その真価を発揮するためには、現物給付やサービスとなんらかのリンクがなされることが期待され、生命保険会社の創意工夫が図られるべきである」とし、「寝たきりなどによる要介護状態」を保障する介護保険の開発と、介護保険の現物給付やサービスとのリンクを強く求めた。
これを受け、1985年9月、明治生命(現明治安田生命)が寝たきりなどによる要介護状態を保障する介護保険を発売し3、さらに1986年7月、日産生命(現プルデンシャル生命)が「世界初の介護人を派遣する現物給付型保険」として「介護保険ケアプラン」を販売した。
介護保険ケアプランは、「寝たきりなどによる要介護状態」を保障する介護保険で、日本臨床看護家政協会などとの提携により、介護給付金が支払われる場合に、現金に代えて介護人派遣を希望する場合には日産生命が同協会などに取り次ぐという仕組みである4。
さらに、1988年4月には、農協共済(JA共済)が、「寝たきりなどによる要介護状態」に加えて、「認知症による要介護状態」も保障する介護保険をはじめて発売した5。
これらの介護保険のほとんどにおいては、「180日(6か月)以上の要介護状態の継続」が介護給付の支払要件とされており、現在でも踏襲されている(一部の生保会社では、「30日」などとしているケースもある)。
その後、2000年4月の公的介護保険の導入により、こうした民間介護保険の保障内容も大きく変更されることとなった。同年5月のアフラックによる「公的介護保険制度に連動する介護保険」の発売6は、顧客にとっての保障内容のわかりやすさを目指したものであり、現在では「生保会社所定の要介護状態(認知症および寝たきりなど)」と「公的介護保険により認定を受けた要介護状態」の双方を保障する介護保険が主流となっている。
公的介護保険による保障は、加入年齢である40歳以上に提供されているが、40~64歳層は、回復の見込みのないがんや初老期における認知症(アルツハイマー)など、16の特定疾病による要介護状態に限られている(65歳以上層はあらゆる要介護状態を保障)。一方で、民間介護保険による保障は、不慮の事故による要介護状態(寝たきり)など、年齢を問わず幅広い介護保障が提供される点が特徴である。
公的介護保険への連動については、要介護2(軽度の介護を必要とする状態)以上または要介護3(中等度の介護を必要とする状態)以上を保障する介護保険など、さまざまなタイプがある。
提供される介護給付についても、年金タイプや一時金タイプなどがある。
また、2013年6月の金融審議会ワーキング・グループによる報告書においては、被保険者が介護を要する状態になった場合などに、保険金ではなく、信頼のできる事業者から介護などのサービスの給付を受けたいというニーズが存在するとして、「サービス提供業者への保険金直接支払い」が提言され7、今後介護保険についてこうしたサービスの開発も想定される。
なお米国においては、日本と同様の公的介護保険はないが、民間介護保険として認知症および寝たきりなどによる要介護状態を保障する「長期介護保険」(Long Term Care,LTC)が発売されている8。
(2015年09月28日「研究員の眼」)
小林 雅史
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