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高齢期の「生活の質」高めるには-高齢者のIADL(手段的日常生活動作)支援を!

土堤内 昭雄
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この3年の間に団塊世代が65歳に達し、新たに600万人以上が高齢者になった。その結果、日本は高齢化率25.1%と、前例のない超高齢社会を迎えている。2000年に公的介護保険制度が導入された時、要介護(要支援)者数は218万人だったが、2013年には564万人と2.6倍に増加し、高齢者の2割近くを占めるほどになった。
これから10年後、団塊世代が後期高齢者になると、日本は“大介護時代”に突入する。何故なら、後期高齢者の要介護割合は前期高齢者の7倍にも上るからだ。一方、介護職員数は、2000年55万人から2013年177万人へ3.2倍に増加してはいるが、10年後には248万人の需要が見込まれ、約30万人が不足するという。そのため厚生労働省は介護人材の量と質の確保に向けた取り組みを始めている。
高齢者の生活の自立度を評価し、要介護度認定に使われる指標が、ADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)だ。介護保険制度では、高齢者自身の食事、排せつ、移動、入浴などの日常の基本動作(ADL)のレベルを判定し、介護が必要な人に対して各種サービスが提供される。
一方、高齢者の「生活の質」を評価する指標に、IADL(Instrumental Activity of Daily Living:手段的日常生活動作)がある。これはADLよりもっと高度な日常生活動作で、買い物、洗濯、掃除、金銭・服薬管理、外出などを含み、多くの高齢者が加齢による衰えを経験する可能性が高い行為だ。要介護状態に至らない場合でも、IADLの低下は高齢期の「生活の質」を大きく左右するため、その維持・向上を図ることが今後の長寿時代を幸せに暮らす上でとても重要になるだろう。
日本の介護システムは、高齢化率の高まりとともに、家族による在宅介護から施設介護へ、そして介護保険を使った在宅・施設での社会介護へと変遷、今はコミュニティベースの地域包括ケアが中心だ。しかし、現在でも要介護者の6割以上は主に「同居する家族」によって介護されている。それは介護が必要な高齢者の生活支援には、介護保険サービスだけでは行き届かない機能も多くあるからだろう。
今後、高齢者の4割近くが「一人暮らし」になることを考えると、だれもが高齢者になる時代の自立生活には、介護同様に、家族や地域コミュニティによる生活支援が不可欠だ。超高齢社会の「生活の質」(QOL)を高めるためには、セーフティネットである介護保険サービスによるADL支援とともに、高齢者のIADLの改善を図らねばならない。来るべき“大介護時代”には、介護人材の育成・確保に加えて、新たな家族や地域コミュニティの在り方が求められるだろう。
(2015年05月11日「研究員の眼」)
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