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- 投資家はさらに楽観的に-アベノミクスによるさらなる株価上昇への期待
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「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」の3本の矢で示されたアベノミクスにより、2012年以降、日本経済回復への期待が膨らみ、株式市場は大きく上昇した。日経平均株価は2012年12月末では約10,400円であったのに対し、2015年3月には19,000円 を超え、約90%も上昇した。近年には見られなかった大きな値上がりと言えよう。
株価がどのように決まるかについては様々な考え方があるが、大雑把に言うと、投資家が将来どの程度株価の上昇を見込んでいるか(「期待リターン」という)によって決まる。ただし、高いリターンを得るためには、一定の損失(リスク)を覚悟しなければならない。このリスクの見込みも株価に影響する。将来のリスクが小さくなれば株価は上昇する。最後に、投資家がどの程度リスクをとっても良いと考えているか(「リスク許容度」という)にも関係している。リスクをとっても良いとする投資家が増えれば株価が上昇する。
このような株式投資に見込まれるリターンやリスクは、その時々の経済環境等に反応して変化することが知られている。将来を決める政策が提示され、これほど大きな株価上昇があると、投資家が株式市場に見込むリターンやリスクは変化した可能性がある。そこで独自のデータを利用して、アベノミクス前の2012年と、株価上昇後の2014年で、投資家の株式市場に対するリターンの見込みを比較してみた(ここでは紙面の都合上、期待リターンについてのみ報告する。その他詳しくは、「アベノミクスによる株価上昇で株式相場への見方は変わったか?」『基礎研レター』2015年4月(予定)参照)。聞き方は単純に「株式市場に将来30年間の投資で見込まれる平均的なリターンはどの程度だと思うか?」というものである。
その結果、2012年では、株式を保有していない者の株式市場の期待リターンは3.4%、既に株式投資を行っている者の期待リターンは7.9%であった。もちろん、株式市場に投資していない者の期待リターンが低いことは納得できる。
一方、株価が大幅上昇した後の2014年では、株式を保有していない者の期待リターンは2.1%に低下した。逆に、既に保有している者の期待リターンは8.9%に上昇している。つまり、現在、株式投資を行っていない者は、株価は十分に値上がりし、今後の株式市場の上昇余地は、以前より低くなったと予想していた。これに対して、株式投資を行っている者は、株価は以前よりまして、さらに上昇余地が大きいと予測している。株式投資を行っている者は、株価はさらに上がると楽観視し、そうでない者は、株式投資を悲観的に考えるという当然の結果であったが、近年の株価上昇は、両者の違いを拡大させる方向に働いたようである。
過去を振り返ってみれば、最も株価が下落する可能が高いのは、プロが上昇を強く予想している場合の方が多いという研究結果がある。有名な投資家テンプルトンの「強気相場は・・・幸福感の中に消えていく」という言葉もある。多くの投資家が楽観的になるほど、この言葉が現実になりそうな感が強まっていく。
一方で全ての者が株式市場に楽観的ではないようだ。少なくとも、この調査で株式を保有していない者は株価の上昇余地は少ないと予想していた。実際、一部の慎重な投資家は、将来をそれほど楽観視していないかもしれない。どちらの見方が正しいか?これは、将来になってみないとわからない。多くの人が将来に楽観的になりすぎた際には注意が必要であろう。
(2015年03月31日「研究員の眼」)
北村 智紀
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