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1年前を思い出してみると・・・
日経平均株価が一時1万8500円を超え、TOPIXも7年ぶりの高値。日本株式は年明け直後こそ海外情勢を受けてややもたついたものの、その後は企業の業績拡大などが追い風となり、堅調に推移しています。今期(2014年度)から来期(2015年度)に株式市場の関心が徐々に移りつつある中、市場関係者の間では「来期(2015年度)二桁増益」という声が聞こえてきます。
この「来期(2014年度)二桁増益」はちょうど1年前にも耳にしたフレーズです。2014年度の業績予想はその後どうなったのか、TOPIX(東証株価指数)のEPS(一株あたり利益)で確認してみましょう(図表1)。2014年2月時点では2014年度は前年同期比10%の増益予想がされていました。しかし、2013年度が2月時点の予想から2%ほど上ブレて着地したことに加え、業績予想が3%引き下げられたことから(図表2)、同年5月までに増益幅が5%まで落ち込みました。
ここで予想が引き下げられたのは、同年4月に消費増税が実施され、その影響だったと多くの方が思われるかも知れません。しかし、消費増税が行われること自体は半年前の2013年10月に決定されたことです。2月の段階の業績予想は消費増税の影響が当然考慮されていたはずです。にもかかわらず、新年度に入って直ぐに予想が引き下げられてしまったということは、他に要因があったのではないでしょうか。
新年度を迎えるとトーンダウン
過去9年を見ると、うち6年は年度が替わってすぐに引き下げられたことが分かります(図表2)。リーマンショックとそれに伴う金融市場の混乱が大きかった2009年度、東日本大震災直後であった2011年度以外でも下方修正、または良くて横ばいという年がほとんどでした。
では、なぜこのように新しい年度に入ると直ちに業績予想が引き下げられる傾向があるのでしょうか。要因の一つとして新年度に対する情報の少なさが挙げられます。毎年、今ごろの時期(1-3月)に株式市場では新年度への注目が高まりますが、会社ではちょうど新年度に向けた事業計画などを取りまとめている最中です。当然、市場関係者が入手できる業績を計る上で手がかりとなる情報は4月以降と比べて少なくなります。つまり、この時期の新年度の予想は市場関係者の裁量の部分が大きくなってしまっているのです。元来、筆者を含めて株式市場に携わる人は株価が上昇し、市場が活況になることを願っており、将来の見通しは楽観的になりがちです。ゆえに強気の予想になりやすくなってしまうのではないでしょうか(図表3)。
冷静な視線が必要
株価の情報と共に来期の増益率などの投資家が日本株式の購入を検討したくなるようなデータを見る機会が増えるかもしれません。しかし、過去の傾向からは今の時期に目にする新年度の予想は市場関係者の期待が込められている可能性があることが見えてきました。
株式投資を考える上では、情報を鵜呑みにせず、情報を冷静に見極めることが必要であることを再確認させられる事象なのではないでしょうか。

03-3512-1785
(2015年02月26日「研究員の眼」)
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