2014年11月12日

10月マネー統計~マネーに再起動の兆し

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■見出し

・貸出動向:増勢は回復傾向
・主要銀行貸出動向アンケート調査:個人の資金需要が底入れ
・マネタリーベース:買入れペースが加速
・マネーストック:再び伸びが拡大基調に

■要旨

10月の銀行貸出(平残)の伸び率は前年比2.5%(前月は2.4%)と拡大。また、貸出残高の前年差も3ヵ月連続で改善し、増勢は回復傾向にある。円安によって外貨建て貸出の円換算残高が膨らんだことも一部影響しているとみられる。今回の追加緩和によって銀行貸出の押し上げ効果が期待されるが、マネタリーベースと銀行貸出の関係は必ずしも安定的ではない点には留意が必要になる。

主要銀行貸出動向アンケート調査によれば、2014年7-9月期の企業向け資金需要判断D.I.は、前回、前々回から横ばいの5となった。依然としてプラス圏(「増加」が優勢)にあり、緩やかで安定した増勢が続いている。一方、個人向けD.I.は大幅上昇を示した。D.I.の水準もプラスに転じており、住宅ローン需要が底入れしたことを示している。

日銀による資金供給量を示すマネタリーベースの10月平均残高は255.8兆円、前年比伸び率は36.9%(前月は35.3%)と3ヵ月ぶりに拡大した。マネタリーベース減少要因である国債発行等が多かったが、積極的な国庫短期証券買入れを実施し、マネタリーベースの拡大を確保した。今後は年末までの残り2ヵ月間で約15兆円の積み上げが必要となる。達成可能圏内だが、追加緩和後の円滑な政策運営を計る試金石とも言えるだけに、今後マネタリーベースの順調な積み上げが進むかどうかは要注目だ。

マネーストック統計によると、市中通貨量を示す10月のM2、M3の前年比伸び率はともに前月からやや上昇した。前年比増加額では、ともに3ヵ月連続で伸び幅が拡大している。なお、M3に投信や外債といったリスク性資産等を含めた広義流動性の伸び率は前月から横ばいとなった。国債のマイナスが拡大したうえ、投資信託(元本ベース)や金銭の信託といったリスク性資産の伸びが鈍化したことによる。今後は追加緩和によって銀行貸出が伸びれば、信用創造を通じてマネーの増勢もさらに強まる可能性がある。

(2014年11月12日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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