2014年10月30日

【10月米FOMC】声明文はややタカ派的と判断

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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【要旨】

金融政策の概要

米国で連邦公開市場委員会(FOMC)が10月28-29日(現地時間)に開催され、2012年9月から実施されている量的緩和政策(QE3)の終了が決定された。声明文では、フォワードガイダンスの部分で0-0.25%の政策金利を「相当な期間」継続するとの表現は維持されたものの、景気判断の部分では、前回の「労働資源が十分に使われていない」との表現から「労働資源の使われていない部分が徐々に縮小している」と上方修正されたほか、足元の下振れは認めているものの、将来のインフレ見通しを変更しなかったことから、声明文は市場ではややタカ派的と判断された。実際、今回の決定に際しては、前回まで金融政策に反対していたタカ派のフィッシャー(ダラス連銀総裁)とプロッサー(フィラデルフィア連銀総裁)が賛成に転じる一方、インフレ見通しが低迷している中でQE3をやめるべきではないとの理由で、ハト派のコチャラコタ(ミネアポリス連銀総裁)が、反対した。(声明の詳細はPDFを参照)。

金融政策の評価

今回決定されたQE3の終了については、前回のFOMCで示唆されており、既定路線だったことからサプライズはない。前回のFOMC以降に発表された経済指標は、9月の雇用統計が8月から大幅に改善したのをはじめ、経済が緩やかなペースで回復しているとの見方を大きく変えるものではなかった。また、エボラ出血熱報道などから一時不安定化していた株式市場も安定しており、金融市場動向からも、FRBがQE3を延長する合理的な理由は無かったと言える。
一方、声明文については、ややタカ派的なトーンとなった。すなわち、労働市場についての評価が上方修正されたほか、インフレに関しても、足元の下振れリスクを認める反面、今後の見通しについてはこれまでの見通しが維持される結果となった。とくにインフレについては、10月16日にセントルイス連銀のブラード総裁(FOMC投票権はなし)が、期待インフレ率の低下を理由にQE3の延長を主張したことが話題になっていたため、その評価が注目されていたが、FRBは足元のインフレ率の低下は、金融政策の意思決定に影響しないとのメッセージを送った。
もっとも、今回の声明文を受けても筆者は、政策金利の引き上げ時期が15年後半との見方を変えていない。今回の声明文では、フォワードガイダンスの部分で政策金利の引き上げ時期は、その時の経済・金融環境次第であることが強調され、経済・金融環境次第で利上げ時期が想定より早まる可能性や遅くなる可能性が明記された。
労働市場、インフレの動向をみると、労働市場は、雇用者数や失業率など、「量」の改善が継続しているものの、労働賃金などの「質」の改善についてはもたついており、労働統計の数値ほど労働市場は改善していないとの見方も根強い。また、インフレについても、短期的な下振れリスクが存在するほか、今後についても、(1)労働賃金の伸びが抑制されていること、(2)原油価格をはじめエネルギー価格が下落していること、(3)ドル高、等、を考慮すると大幅な上昇は見込まれない。このため、抑制されたインフレの下、FRBは「質」を伴う労働市場の改善を慎重に判断するとみられるため、政策金利の引き上げに時期については、利上げを急がず、相当慎重に判断するとみられる。

(2014年10月30日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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