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1――東京に集まる人口
夜、飛行機から見える街の明かりは美しく、景色が良く見える窓際の座席が取れないときは損をした気分になる。特に東京の街はどこまでも広がっていて、こんなに街が途切れることなく延々と続く都市は他にはないのではないかと思う。幾つかの定義では、東京を中心とする都市圏は、人口規模で世界最大だという。
第二次世界大戦後の農村から大都市への人口移動が日本の高度成長を可能にしたが、高度成長が終わっても東京圏への人口集中が続いてきた。人口の集積が日本経済の活力となってきた一方で、通勤時間が長く、朝夕の通勤ラッシュの混雑が激しいなど、人口の集積のもたらす負の側面も大きくなってきた。
しかし集積のメリットを求めて企業は東京に集中し、仕事を求めて人々は東京に集まってきた。企業が集積のメリットを享受する一方で、マイナスはもっぱら働く人々が負担してきたとも言える。仕事さえあれば東京以外のところに住みたいと思っている人も少なくないだろう。
2――東京からどこへ転居しているのか
東京圏からどこへ人が転居しているのかを見てみると、当然のことながら人口の多い府県に多くの人が移動している。東京圏からの人口移動規模が、受け入れ先の人口規模との比較で大きいのかどうか、東京圏からの転出者の中に占める割合と府県人口の割合(分母は東京圏を除く総人口)で見てみると、人口シェアを上回る人口移動シェアを獲得している県がある。
意外にも大阪、愛知、兵庫、京都といった大都市を抱える府県は人口規模に比べると東京圏からの移動者は少ない。茨城や栃木、群馬といった東京圏近郊の県が、人口規模に比べて東京圏からの転入者を多く獲得しているのはある意味当然だが、少し離れた宮城や新潟、長野でも人口シェアを大きく上回る移動者を受け入れている。東日本の道県への移動が多くなるのはある意味で当然のことだろうが、西日本でも福岡や沖縄は人口規模に比べて多くの転入者を獲得しているし、東日本とはいうものの東京からは遠く離れている北海道も人口移動者が人口規模に比べて多い。
3――地域に応じた社会資本の整備を
東京圏から地方に移り住むというと、大都会の生活を嫌って大自然の中で生活したいという人の話が取り上げられることがあるが、全体の人口移動からすればそうした人はわずかだろう。長年東京で暮らした身に住みやすいということや、家族が付いてきてくれるかどうかということを考えると、移動先にはある程度の都市機能があることが望ましいだろう。
とは言うものの、東京圏からの転入者を引き付けるために、日本全体に対して同じように魅力的な都市機能を整備することは無理だ。比較的財政に余裕のあった高度成長期ですら、東京から人を引き付けるほどの手厚い投資をすることはできなかった。むしろ立派な施設を作っても、十分に活用できなかったり、逆に施設の維持管理の負担に苦しんだりするということもあった。今後さらに高齢化が進んで社会資本への投資が困難になっていく中では、広く薄く投資をするというやりかたでは、魅力ある地域づくりをすることはできないだろう。
一つの都市の中でも人が集まって住むようにしなければ、効率が悪くて限られた資金では提供できる行政サービスの質が低くなってしまう。県の中でも大きな人口集積が可能になるような都市基盤の整備ができる地域はどうしても数が限られる。社会資本の整備は、安倍政権の掲げる地方創生のメニューの重要な要素に違いないが、日本全国を東京と同じようにすることではないはずだ。
ある地域は自然を活かすように、また別の地域では人口の集積を目的として、それぞれの地域の特性に応じた社会資本の整備のしかたを考えるべきだ。
(2014年10月28日「エコノミストの眼」)
櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)
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