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- 続・少子化対策の留意点-「未来を変える」 意思決定戦略を!
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私は先週の本欄で、『少子高齢化が深刻化する現在、高齢化と少子化の課題は不可分であり、ふたつを同時に解決する処方箋が求められている』と書いた。そして、少子化対策の財源確保には、『高齢者福祉は高齢者の世代内相互扶助を促進することで維持・向上を図り、それにより軽減する社会支出を少子化対策に充てることが有効ではないか』と述べた。今回は引き続き「選択する未来」シンポジウムを聴いて感じた、少子化対策に関する留意点について考えてみたい。
同シンポジウムの最後に慶應義塾長の清家篤さんが、『人口構造変化は最も高い確度で将来推計ができる。このまま少子高齢化を放置していては、将来世代から怠慢と指摘されかねない。残された時間は少ない』と総括された。少子高齢化という人口構造変化の課題は、これまでも多くの人が指摘し、対応策も検討されてきた。それにもかかわらず、それが実際の政策としては実らず、年金制度などの様々な社会制度の抜本的な改革が先送りされてきたのではないだろうか。
その理由は、民主主義という国家の意思決定方式が、少子高齢化という人口構造の中でうまく機能していないためではないか。人口の多くを占める高齢世代が、自らの不利になるような社会制度改革を受容するとは考えにくい。しかし、裕福な高齢世代が多くの資産を保有するのにも理由があるのだ。民間の有料老人ホームなどは高額な入居金が必要な一方、特別養護老人ホームの待機高齢者は52万人を超え、相当の資産があっても健康や社会的孤立などに対する不安が払拭できないからである。
政府が、高齢期に安心して暮らせる住宅と健康の社会基盤を充実することにより、多くの高齢者の不安を軽減できれば、高齢者は過剰に資産を溜め込む必要もなくなるだろう。そして、持続可能社会をつくる上で、“シルバー民主主義の危機”も回避できるのではないだろうか。
少子化の課題を解消するには、実現のための戦略が不可欠である。決して、高齢世代と若年世代の対立構図をつくってはならない。なぜなら、少子高齢化の人口構造の下では、両世代がともに受益者となるウィン・ウィンの関係を築くことができなければ、持続可能な政策の意思決定は難しいからだ。
1億2713万人が暮らす日本という巨大な船が、眼前に迫る「少子高齢化」という氷山を回避できずに激突・沈没するという“タイタニック号の悲劇”を起こしてはならない。残された時間は少ないが、今、「選択する未来」委員会に求められていることは、これまで検討してきた将来像を実現するための「未来を変える」意思決定戦略を構想することではないだろうか。
(2014年10月27日「研究員の眼」)
土堤内 昭雄
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