- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 日本経済 >
- 家計調査14年8月~夏場の個人消費は低調に終わる
■見出し
・実質消費支出は大幅減少が続く
・実質所得の減少が引き続き消費の下押し要因に
■要旨
総務省が9月30日に公表した家計調査によると、14年8月の実質消費支出は前年比▲4.7%となった。減少幅は7月の同▲5.9%から若干縮小したが、事前の市場予想(QUICK集計:前年比▲3.6%、当社予想は同▲2.5%)を下回る結果となった。
財・サービス区分別には、駆け込み需要が大きかった耐久財の減少幅が再び拡大した(7月:前年比▲1.0%→8月:同▲10.4%)ことに加え、駆け込み需要と反動の影響が比較的小さい非耐久財(7月:前年比▲5.8%→8月:同▲4.5%)、駆け込み需要がほとんど見られなかったサービス(7月:前年比▲5.0%→8月:同▲5.2%)も大幅な減少が続いた。このことは、個人消費の減少の主因が消費増税直後の駆け込み需要の反動からそれ以外の要因に変わっていることを示している。
実質消費水準指数(除く住居等、季節調整値)は前月比2.8%と持ち直したが、7月の落ち込み(前月比▲3.4%)を取り戻すまでには至っておらず、消費税率引き上げ前の駆け込み需要が本格化する前の水準を依然として大きく下回っている。
8月の消費関連統計は、駆け込み需要の反動の影響が和らぎ回復に向かうとみられていた夏場の個人消費が引き続き低調な動きとなっていることを示すものとなった。
この背景には、台風や豪雨などの天候不順によって外出が控えられたこともあるが、それ以上に大きいのは消費税率引き上げに伴う物価上昇によって実質所得が大きく低下していることだろう。毎月勤労統計によれば、現金給与総額(名目)は夏季賞与の増加を主因として5月の前年比0.6%から6月が同1.0%、7月が同2.4%と伸びを高めたが、ボーナスのウェイトが低い8月は同1.4%と伸びが低下した。一方、消費者物価上昇率(持家の帰属家賃を除く総合)は4月以降、前年比で4%台の伸びを続けている。この結果、4月から6月まで前年比で▲3%台のマイナスを続けた実質賃金上昇率は、7月には前年比▲1.7%となったが、8月には同▲2.6%とマイナス幅が再び拡大した。
企業業績の好調を反映し、夏季賞与に続き年末賞与も増加することが期待されるが、それまでは所定内給与と所定外給与が賃金全体の伸びを左右することになる。所定内給与は前年比で0%台前半(8月速報では前年比0.6%となったが、確報で下方修正される可能性大)の伸びが続いており、消費増税後の景気減速に伴い所定外給与も伸びが鈍化している。実質所得の低下が引き続き個人消費の下押し要因となりそうだ。
(2014年09月30日「経済・金融フラッシュ」)
このレポートの関連カテゴリ
03-3512-1836
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
斎藤 太郎のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2024/09/09 | 2024・2025年度経済見通し-24年4-6月期GDP2次速報後改定 | 斎藤 太郎 | Weekly エコノミスト・レター |
2024/09/02 | 法人企業統計24年4-6月期-経常利益(季節調整値)は製造業、非製造業ともに過去最高を更新 | 斎藤 太郎 | 経済・金融フラッシュ |
2024/08/30 | 鉱工業生産24年7月-自動車の下振れなどから、7-9月期は小幅な増産にとどまる見込み | 斎藤 太郎 | 経済・金融フラッシュ |
2024/08/30 | 雇用関連統計24年7月-新規求人数が前年比で増加に転じたが、低迷は継続 | 斎藤 太郎 | 経済・金融フラッシュ |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年09月13日
自動車保険料率の引き上げに向けた動き-自動車保険と傷害保険の参考純率の改定 -
2024年09月13日
インド消費者物価(24年8月)~8月のCPI上昇率は小幅上昇も2ヵ月連続で物価目標を下回る -
2024年09月12日
外国株式ファンドが一時、売却超過に~2024年8月の投信動向~ -
2024年09月12日
本社移転は従業員満足度にプラス効果をもたらすか? -
2024年09月12日
企業物価指数2024年8月~円高の急進による輸入物価の下落が国内企業物価を押し下げ~
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
【家計調査14年8月~夏場の個人消費は低調に終わる】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
家計調査14年8月~夏場の個人消費は低調に終わるのレポート Topへ