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- 鉱工業生産14年8月~在庫調整圧力が一段と高まる
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■見出し
・8月の生産は市場予想を大きく下振れ、2ヵ月の減少
・生産計画が大幅に下方修正
・2四半期連続の減産は確実、景気後退の可能性も
■要旨
経済産業省が9月30日に公表した鉱工業指数によると、14年8月の鉱工業生産指数は前月比▲1.5%と2ヵ月ぶりの低下となり、先月時点の予測指数の伸び(前月比1.3%)、事前の市場予想(QUICK集計:前月比0.3%、当社予想は同0.5%)をともに大きく下回った。出荷指数は前月比▲1.9%と2ヵ月ぶりの低下、在庫指数は前月比1.0%と4ヵ月連続で上昇した。
製造工業生産予測指数は、14年9月が前月比6.0%、10月が同▲0.2%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(8月)、予測修正率(9月)はそれぞれ▲3.9%、▲1.6%となった。実現率のマイナス幅は大雪の影響で生産計画が大きく下振れした14年2月(▲4.1%)以来の大きさとなった。14年8月の生産指数を9月の予測指数で先延ばしすると、14年7-9月期は前期比▲0.7%(4-6月期:同▲3.8%)となり、2四半期連続の減産は確実となった。現時点では輸出や国内需要の持ち直しに伴い10-12月期は3四半期ぶりの増産を予想しているが、在庫の積み上がりに歯止めがかかっていないため、回復ペースは当面緩やかにとどまることが予想される。最終需要がある程度回復しても企業は在庫の削減を優先し生産を抑制する可能性が高いためだ。
在庫指数は5月以降4ヵ月連続で上昇し、この間の上昇幅は7.1%となった。7月までの3ヵ月で70%以上の急上昇となり、在庫積み上がりの主因となっていた輸送機械は8月には前月比▲5.0%積み上がりにいったん歯止めがかかる形となったが、その一方で8月は15業種中11業種で在庫指数が上昇しており、在庫の積み上がりは広範に及んでいる。国内販売や輸出の低迷が企業の想定以上となっていることがこの背景にあると考えられる。前回の消費増税時(97年度)と異なり、今回は消費増税前の段階で企業が在庫の抑制を図っていたが、増税後の在庫積み上がりのペースは前回増税時とほぼ同程度となっている。
日本の景気基準日付は主として景気動向指数(一致指数)のヒストリカルDIを用いて決定されるが、一致指数の構成指標11系列のうち4系列は鉱工業生産の関連指標である。このため、景気の転換点と鉱工業生産の転換点は概ね一致している。14年8月の生産指数は直近のピークである14年1月よりも▲8.1%低い水準となっており、これは前回のミニ景気後退局面(12年4月~11月)における生産指数の低下幅(▲8.0%)に匹敵する大きさとなっている。
もちろん、景気循環は鉱工業生産の動きだけで決まるわけではないが、消費税率引き上げをきっかけとして景気後退局面入りしたことが事後的に認定される可能性が出てきたことは確かだろう。
(2014年09月30日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1836
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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