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- 【8月米雇用統計】14.2万人だが悲観は不要、むしろ賃金上昇に注目
2014年09月08日
【要旨】
結果の概要:20万人を大きく割り込む
9月5日、米国労働省(BLS)は8月の雇用統計を公表した。8月の非農業部門雇用者数は前月対比で14.2万人の増加 (前月改定値:+21.2万人)となり、増加幅は前月から縮小、市場予想の+23.0万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)を大きく割り込み、市場予想で最も悲観的な予想であった+19.0万人にも届かなかった。7月まで6カ月連続で雇用改善の目途となる20万人超えを達成していたが、7カ月連続の達成とはならなかった。
失業率は6.1%(前月:6.2%、市場予想:6.1%)と前月より小幅に低下、こちらは市場予想と一致した。ただし、労働参加率は62.8%(前月:62.9%)と小幅ながらも悪化している(詳細はPDFを参照)。
結果の評価:悲観は不要、今後は賃金伸び率の上昇傾向は見られるかに注目
8月の雇用増は予想を大幅に下回り、20万人にも届かなかったが、これまで雇用が急速に増えてきたことを考えると、増加幅が拡大しにくくなることは止むを得ない面がある。7月まで6カ月連続で20万人超えを果たしており、今年に入ってからの月平均雇用増も21.5万人と20万人超えを維持している。雇用拡大ペースは悪くなく、今回の結果を悲観的に捉える必要はないだろう。
今回の雇用統計ではヘッドライン(非農業部門の雇用増)の悪さが目立つが、注目したいポイントは、時間当たり賃金伸び率である。全雇用者ベースの時間当たり賃金伸び率は前年同期比で見て+2.1%(前月:+2.1%、市場予想:+2.1%)、前月比で見て+0.2%(前月:+0.1%、市場予想:+0.2%)とほぼ横ばいであったが、管理者を除く生産者ベースで見ると、前年同期比で見て+2.5%(前月:+2.3%)と2010年5月以来の伸び率まで改善している。前月比で見ても+0.3%(前月:+0.2%)とやや高めの数値がでている。もちろん単月のデータであり、上昇基調にあることが確認された訳ではないが、足もとの雇用情勢を見ると、賃金上昇率に上昇圧力が見られても良い地合いになりつつあると見られる1。今後の賃金動向は一層注目と言えるだろう。
一方、8月は労働参加率が低下している。緊急失業給付(EUC)が昨年12月に失効して以降、特に27週以上の長期失業率が急速に低下しており、失業者に占める長期失業者のシェアの縮小傾向に歯止めはかかっていない。長期失業者が職を見つけるのではなく、職探しを諦めて、労働市場から脱退している可能性がある。イエレンFRB議長の言うスラック(弛み)のひとつであるが、こうした状況のなかでも、賃金に上昇圧力が生じると、利上げ圧力は強まるだろう。金融引き締めを実施せざるを得ない状況になった場合には、労働市場に存在するスラック(弛み)が完全には解消せずに定着し、構造問題化してしまう可能性も孕んでいると言える。
結果の概要:20万人を大きく割り込む
9月5日、米国労働省(BLS)は8月の雇用統計を公表した。8月の非農業部門雇用者数は前月対比で14.2万人の増加 (前月改定値:+21.2万人)となり、増加幅は前月から縮小、市場予想の+23.0万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)を大きく割り込み、市場予想で最も悲観的な予想であった+19.0万人にも届かなかった。7月まで6カ月連続で雇用改善の目途となる20万人超えを達成していたが、7カ月連続の達成とはならなかった。
失業率は6.1%(前月:6.2%、市場予想:6.1%)と前月より小幅に低下、こちらは市場予想と一致した。ただし、労働参加率は62.8%(前月:62.9%)と小幅ながらも悪化している(詳細はPDFを参照)。
結果の評価:悲観は不要、今後は賃金伸び率の上昇傾向は見られるかに注目
8月の雇用増は予想を大幅に下回り、20万人にも届かなかったが、これまで雇用が急速に増えてきたことを考えると、増加幅が拡大しにくくなることは止むを得ない面がある。7月まで6カ月連続で20万人超えを果たしており、今年に入ってからの月平均雇用増も21.5万人と20万人超えを維持している。雇用拡大ペースは悪くなく、今回の結果を悲観的に捉える必要はないだろう。
今回の雇用統計ではヘッドライン(非農業部門の雇用増)の悪さが目立つが、注目したいポイントは、時間当たり賃金伸び率である。全雇用者ベースの時間当たり賃金伸び率は前年同期比で見て+2.1%(前月:+2.1%、市場予想:+2.1%)、前月比で見て+0.2%(前月:+0.1%、市場予想:+0.2%)とほぼ横ばいであったが、管理者を除く生産者ベースで見ると、前年同期比で見て+2.5%(前月:+2.3%)と2010年5月以来の伸び率まで改善している。前月比で見ても+0.3%(前月:+0.2%)とやや高めの数値がでている。もちろん単月のデータであり、上昇基調にあることが確認された訳ではないが、足もとの雇用情勢を見ると、賃金上昇率に上昇圧力が見られても良い地合いになりつつあると見られる1。今後の賃金動向は一層注目と言えるだろう。
一方、8月は労働参加率が低下している。緊急失業給付(EUC)が昨年12月に失効して以降、特に27週以上の長期失業率が急速に低下しており、失業者に占める長期失業者のシェアの縮小傾向に歯止めはかかっていない。長期失業者が職を見つけるのではなく、職探しを諦めて、労働市場から脱退している可能性がある。イエレンFRB議長の言うスラック(弛み)のひとつであるが、こうした状況のなかでも、賃金に上昇圧力が生じると、利上げ圧力は強まるだろう。金融引き締めを実施せざるを得ない状況になった場合には、労働市場に存在するスラック(弛み)が完全には解消せずに定着し、構造問題化してしまう可能性も孕んでいると言える。
1 9月9日公表予定Weeklyエコノミスト・レター「米国経済の見通し-果たして、賃金は上昇するのか?」を参照。
(2014年09月08日「経済・金融フラッシュ」)
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経歴
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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