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- 二極化するアベノミクスの浸透度-若年層と地方部ほど差の出る景況感
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消費増税による反動減も落ち着き、個人消費は回復に向かうという見通しが多い。しかし、本当に景気は良くなっているのか?という消費者の疑問の声も聞く。
昨年から、賞与や残業代等が増え、名目賃金は増加しているが、物価の上昇がそれを上回っているため、実質賃金は減少している。日常生活に関わる商品では、値上げが相次いでいる。円安による輸入飼料や原材料の高騰で、卵やバター、牛乳、食用油などの値段が上がっている。海外旅行も、円安による割高感が解消されず、海外旅行業者の業況指数はマイナスが続く1。
一方、活発な消費領域もある。百貨店の売上高は、増税直後を除けば、概ね前年同月を上回る2。特に、宝飾・貴金属等の贅沢品の売上高の上昇幅は大きく、2013年1月から前年同月比+5%以上を維持し続けている。また、今夏の海外旅行は、比較的値段の高い「中距離方面」が人気だ。JTBによれば、今年の1位はホノルルで、ロンドンやパリも順位を上げている3。
消費に温度差がある背景には、消費者間で二極化が生じていることがある。二極化には、(1)正規雇用者と非正規雇用者、(2)有価証券等の金融資産保有率が高い世帯と低い世帯、(3)都市部居住者と地方部居住者、などがあげられる。
(1)正規雇用者では、この春、一部企業ではベースアップもあり、実質賃金が増えた雇用者もいる。実質賃金が増えていない場合も、雇用が安定的であれば、賞与や残業代などの一時的な賃金増で消費意欲は高まりやすい。一方、非正規雇用者は不安定な立場で賃金水準も低く、目先の賃金増では消費意欲は高まりにくい。
(2)有価証券保有率の違いは、株高の恩恵を受けているかどうかということだ。有価証券保有率は、世帯主の年齢が高いほど高く、若年世帯では低い4。
若年層では、高年齢層より非正規雇用者が多い。よって、(1)と(2)は、若年層と比較的年齢の高い層における二極化と言い換えることもできる。
(3)都市規模別に実収入や可処分所得の推移をみると、いずれも、名目賃金は上昇するものの、物価の上昇により実質賃金は低下、という同様の傾向を示している。しかし、マイナスに転じた時期やその度合いが異なっている。都市規模が小さいほど、物価の上昇に対して賃金が増加しておらず、安倍政権発足以降の実収入等の増減率の前年同月比の平均値が小さい(図)。
企業業績は全体的に改善傾向にある。2013年度の地方税収は、業績が改善した企業からの税収増で、2008年度以来の高水準だ。とはいえ、都市部と地方部では業績の改善状況に差があり、賃金への反映にも差が出ているのだろう。
5月に「日本創成会議」は、人口の再生産力を示す20~39歳の女性人口が半分以下になる「消滅可能性都市」は、49.6%にも上ることを発表した5。少子化の進行を食い止め、人口規模を維持するためには、出生率の低い都市部への人口集中に歯止めをかけ、若者にとって魅力ある地方拠点都市を創設すること等をまとめている。地方拠点都市とその周辺に、就労環境や教育・研究機関を整備し、通勤時間や生活コストの軽減を図ることで、若者が安心して子を生み育てられる環境を整備する。
働き方や家族形成という個人の選択について、人口1億人維持という大義を振りかざされても、若者の心には響きにくい。しかし、若者にとって真に利点があり、豊かな生活を想像できるような魅力的な地方拠点都市ができるのであれば、若者は自然に移動するだろう。そうなれば、現在のような二極化も生まれにくい、多くの国民が豊かさを感じる社会の形成につながる。
(2014年09月05日「基礎研マンスリー」)
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- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
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