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- 【7月米FOMC】タカ派の声が強まる?
【要旨】
金融政策の概要
米国で連邦公開市場委員会(FOMC)が7月29-30日(現地時間)に開催され、資産購入ペースの縮小(100億ドル/月の減額)が決定された。資産購入額の減額は事前の市場予想の通りだった。声明文では、景気の現状判断と見通しが若干変更されたが、フォワードガイダンスについては変更されず、大きなサプライズはなかった(声明の詳細はPDFを参照)。
金融政策の評価
FOMCで決定された金融政策におけるテーパリングの継続は事前の予想通りであり、金融政策に関する大きなサプライズはなかった。ただし、細かな声明文の変更はされており、特に以下の2点は注目と言える。
まず、労働市場に関して、「労働資源が十分に使われていない」(≒労働市場に弛み、スラックが存在する)との文言を追加している。失業率の低下はかなり進んだが、FOMCとしては雇用環境の改善が十分に進んでいないと認識していることを明文化したことになる。
また、足もとのインフレ率が上昇していることを受けて、「インフレ率はいくらか長期見通しに近づいた」「インフレ率は2大責務(デュアルマンデート)と整合的となる水準に向かっている」「インフレ率が2%を下回る状況が続く可能性はやや減った」との表現が追加された。
インフレ率に関しては、今後も物価上昇圧力が続くようであれば、FOMC内で利上げ時期を巡る対立が激しくなる可能性がある。
これまでは、インフレ率が低めで推移してきたことが、雇用の改善が進むなかでも、実質ゼロ金利下で量的緩和を続けることを正当化させてきた。しかし、物価上昇圧力が強まれば、実質ゼロ金利の正当化は難しくなる。
今回のFOMCでも、タカ派で知られるフィラデルフィア連銀のプロッサー総裁が「現在の(低い)FF金利目標を『資産購入策が終了してからも相当な期間』続けることが適切」とするガイダンスに異議を唱え、反対票を投じている。
声明文では、労働市場に弛み(スラック)が存在するという認識が改めて示されたが、失業率や非農業部門の雇用者数といった「量」の面での改善は進んでいる。物価上昇圧力が強まるなかでは、労働市場の改善を促すために「低め」の政策金利が歓迎されるとしても、「低め=実質ゼロ」でFOMCメンバーの見解を一致させることは難しいだろう。これは、前回6月のFOMCで公表された、FOMC参加者が想定する政策金利の見通しに大きなバラツキがあったことから容易に想像がつく。
物価上昇圧力が強まり、タカ派の声が通りやすくなる環境では、利上げの前倒し(観測)にも拍車がかかりやすくなる。それだけに、インフレ率の動向やFOMCのタカ派メンバーの発言がこれまで以上に注目されるだろう。
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