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- 【米雇用情勢】金融危機後の賃金動向
2014年07月18日
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- 米国経済は金融危機で失われた雇用の「量」の面での回復は進んできたが、「質」の面での回復が遅れている。「雇用の質」を反映する指標のなかでも、賃金上昇率の動向には注目が集まる。イエレンFRB議長が雇用環境の改善は最終的に賃金に波及すると指摘しており、またインフレ率にも深く関係する指標だからである。
- 雇用者全体の賃金総額である雇用者報酬は、金融危機前の伸び率まで回復していない。これを雇用者数、労働時間、時間当たり賃金の要因に分解すると、特に時間当たり賃金が伸び悩んでいることが分かる。
- 金融危機後の雇用増を業種別に見ると、製造業の雇用が失われる一方でサービス業の雇用が拡大している。サービス業のうち雇用が増えた業種には、労働時間の短い教育・医療サービス業や、低賃金でかつ労働時間も短い娯楽・接客サービス業が挙げられ、金融危機以降の雇用シフトが賃金上昇率の抑制に影響した面がある。
- ただし、雇用シフトによる賃金上昇率の抑制効果は限定的である。むしろ各産業、それぞれで賃金や労働時間の上昇率が鈍化していることが、全体の賃金や労働時間伸び率の減速の決定的な要因と言える。実際、フィリップスカーブを見ると、多くの業種で下方シフトが観測でき、賃金上昇率が鈍化していることが分かる。
- 賃金上昇率を失業率と、雇用の弛み(スラック)を示す労働参加率で回帰すると、金融危機前から足もとまでの賃金上昇率の鈍化(約2%ポイント)のうちの大半がスラックを示す労働参加率の低下による効果であることが分かる。労働市場のスラックで生じている賃金上昇率への低下圧力は強く、改善には時間を要すると見られる。
(2014年07月18日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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