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「薬」との上手なつきあい方-中高年男性のQOL(生活の質)向上へ
土堤内 昭雄
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以前、中高年男性を中心にしたバスツアーに参加したことがある。途中のレストランでの昼食時のことだ。食事が済んだ人の多くが、手持ちのポーチから何やら取り出し始めた。食後に飲む「薬」だ。降圧剤や尿酸値を抑える薬など、さまざまな慢性疾患に対する処方薬だろうか。多くの中高年男性が生活習慣病を抱えている今日、「薬」は日常生活に必要不可欠なものになっている。
厚生労働省「平成23年度国民医療費の概況」によると、日本の国民医療費は38兆5,850億円、国民一人当たり30万1,900円だ。その中で薬局調剤費は6兆6,288億円と医療費全体の17.2%を占めており、年齢階級別にみると65歳以上が3兆6,509億円(55.1%)、一人当たり12万2,700円と、前年度より7.5%の高い伸び率を示している。日本は国際的にみても「薬消費大国」であり、ジェネリック医薬品の占率も数量ベースで23%とOECD諸国平均の41%を大きく下回っている*。
先日、日本人間ドック学会が「検査値の基準範囲」を見直し、その幅が緩和されたことが大きな話題になった。それは誰しも自分の検査値が基準範囲に収まっているかどうか、大いに気になるからだ。血液検査をすれば、十数項目の検査値のうちいくつかの項目が基準範囲から外れることはよくある。そこで基準値から外れた項目を改善するために薬が処方されるのだが、中高年にもなると複数の疾患をもち、多くの薬を同時に服用する人も多いことだろう。
このような検査に基づき、重篤な疾患に至る前に投薬により予防的に対処することは極めて重要だ。しかし、検査値の基準範囲を超えた項目すべての薬を服用することが、体全体の健康状態を良好に保つ最善の方法だろうか。薬の「飲み合わせ」についての不安も付きまとう。病院でも専門化・細分化した臓器単位の医療の前に、心身のトータルな健康を考えた「総合診療科」の重要性が増しているように、必ずしも「部分最適」の処方の集合が、「全体最適」になるとは言えないのではないだろうか。
今後、超高齢社会がさまざまな慢性疾患と共生してゆく時代であることを考慮すると、過度に薬に依存しないことが重要だ。日常生活の質を高めるような適切な食事による栄養摂取や運動療法を組み合わせた総合的な処方箋が必要だろう。毎食後、多くの薬を服用するお年寄りが、『食後のたくさんの薬を見ると、とても食欲など湧いてこない』と話していた。おいしい料理を食べ、仕上げのデザートが水と薬ではあまりに味気ない。生活習慣病を抱える多くの中高年男性のQOL(生活の質)向上へは、「薬」との上手なつきあい方が求められる。
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