コラム
2014年04月24日

野球タイプか、サッカータイプか-「組織」を置き換えて見つめ直すと何かが見える

谷本 忠和

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春になると選抜高校野球大会が放映され、街では初々しい新入生や新社会人の姿をあちこちで見かける。チョット明るい気分になる。
   選抜大会は終わってしまったが、高校野球はいつ見ても清々しい。監督の指揮が効き、選手の眼が輝き、全力でプレーしている。鍛え上げられた連携プレーや向上心が溢れる懸命なプレーは心を打つ。応援にも一体感がありチームへの思いが溢れ出ている。
   「うちのセクションにも、高校野球のような統制の効いた組織運営や自らを鍛え目標に向かって邁進する社員、そして周囲の応援もほしい・・・」と思うビジネスマンも少なからずいるだろう。そういえば、以前、「消防の危機管理」についてお話を伺ったときに、「野球タイプ」、「サッカータイプ」というワードが出てきた。
   日本では野球もサッカーも身近なスポーツだが、ここでいう「野球タイプ」、「サッカータイプ」とは、どういうことだろう。
   偏見を恐れずに考えてみたい。

野球は、監督の戦略・指示のもとで、選手は忠実に行動する。野球には攻守があり、役割は分業化されていて、組織的な連携プレーはパターン化できる。分業化された役割のもとで、選手は1球毎に「バッターの心理」や「ピッチャーの配球」を読み、「打球の方向」や「ランナーの動き」を想定して、静から動、俊敏に動く。選手には正確な動きと「投げる・打つ・走る・守る」など個々の優れた個人技が求められるが、勝負は攻守ともに監督の采配で動き、その統制が問われる。言い換えれば、野球は監督からの戦略・指示を選手が実現するスポーツである。組織としては「トップダウン型」ともいえる。
   野球に対しサッカーは、監督の戦略も指示もあるが、いざ試合が始まるとフォーワードもミッドフィルダー・ディフェンダーも全員が自ら考えて行動する。動き方によって一瞬で攻守が逆転し、チャンスにもピンチにもなる。サッカーは攻守のある野球に比べて想定しなければならない場面が桁違いに多く、選手には「瞬時に次の展開を読み、動く」という状況判断力、広い視野、機転、決断力も強く求められる。監督の指揮の下ではあるが、サッカーは選手一人ひとりが瞬時に先を読み、攻撃や守備の戦術を考え、全員が連動して動くスポーツである。強いて言えば、組織としては「フラット型」ともいえる。
   「パワー、スピード、スタミナ」など選手に求められる基本的な運動能力は同じだろうが、野球とサッカーでは指揮系統も試合の中で選手に求められる能力も違うようだ。

消防は、常に死と向かい合っている危険な仕事だ。一歩前に出るのか、それとも後退するのかその判断を間違えると死につながる。助けることができた人を助けられなくもなる。想定しておかなければならない局面がたくさんあり、その想定を超えることもある。そうした状況に対し、消防士にはまさしく「自らが状況を瞬時に判断し、変化を次々と読み、全員が連動して動く」という行動が必要だ。そう、わかり易くいえば、消防士には「サッカータイプ」の能力が求められるという。
   勿論、どちらが優秀ということではなく、タイプだ。会社の組織といえば、一般的には部長、課長がおり、上位が権限を持った「上意下達」で、「野球タイプ」に近いのかもしれない。

新年度に入り、「今年度こそ、組織も個々人の能力もパワーアップし、成長したい」という新たな気持ちで取組んでいる管理職も多いだろう。一概には言えないが、組織力や個々人の能力を引き上げるために、自分たちの「組織」を「野球チーム」や「サッカーチーム」などに置き換えて、組織の指揮系統、個々人の立ち位置、個々人に求めるべき能力を見つめ直すことも成長へのヒントを与えてくれるのではないだろうか。

(2014年04月24日「研究員の眼」)

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谷本 忠和

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