2014年03月10日

【2月米雇用統計】雇用増17.5万人で市場予想超え、テーパリング継続の後押しに

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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【要旨】

結果の概要:雇用増が大幅拡大

3月7日、米国労働省(BLS)は2月の雇用統計を公表した。2月の非農業部門雇用者数は前月対比で17.5万人の増加(前月:+12.9万人)と拡大、市場予想の+14.9万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)も上回った。さらに前月、前々月の数値も上方修正され、好感できる内容であった。一方、失業率は6.7%(前月:6.6%、市場予想:6.6%)となり前月や市場予想よりも悪化した。
2月は、家計調査における「天候要因による就業不能者数」が1月よりも拡大したものの、事業所調査では予想以上の雇用増が見られ、悪天候によるかく乱要因は限定的だったと言える。ただし、事業所調査でも生産部門の回復は遅く、また労働時間の減少により週当たりの賃金上昇率が低迷するなど弱さも残る内容だった(詳細はPDFを参照)。


結果の評価:FOMC声明の失業率基準に注目

2月の雇用統計が市場予想を上回る結果となったことで、次回(3月18-19日)のFOMCでのテーパリング継続は決定的になったと言えるだろう。そもそも、イエレンFRB議長は、寒波の影響について時間を掛けて判断する必要があるとの考えを示していたことから、2月の雇用統計が不調でも、すぐにテーパリングを縮小することは想定しにくかった。今回、2月の雇用統計が予想以上に強かったことで、テーパリング継続のために「弁明」をする必要も薄れたと言えるだろう。

テーパリング継続が確実視されたことで、FOMCでの注目点は、フォワードガイダンス、特に失業率基準に絞られるだろう。失業率はFRBの設定する基準である6.5%に近づいている。この数値基準を変更するのか否か、また、変更する場合はどのように変更するのか(基準の引き下げ、質的な基準への変更など)、現状ではコンセンサスはないと言える。
問題は、失業率が雇用環境を総合的に示す指標となっておらず、また、先行きの動向が不透明なことである。雇用の実態から見れば、現在の失業率は低い。主因は、労働参加率の低下だが、今後、どのような動きをするのか予想しにくい。雇用環境の改善によって、労働参加率が回復すれば失業率は下げ渋る。一方、労働参加率が回復しなければ、失業率は低下し続ける。
そのため、失業率基準だけでは、FRBが想定するだろう雇用の適正水準は表せない状況である。変更の方法として、例えば、FRBが失業率基準を引き下げた場合、労働参加率が上昇し、実際の失業率が低下しなければ必要以上に低金利の状況を続けてしまう可能性もある。その代替策として労働参加率や周辺労働人口など他の指標に基準を導入しても、失業率と同様に今後、雇用環境を適切に表してくれる保証はない。
一方、基準の変更をしなくても、現状のフォワードガイダンスでは「6.5%を下回ってからも相当な期間、ゼロ金利政策を続けることが適切だろう」としていることから、金融政策とガイダンスがすぐに矛盾する訳ではない。したがって、新たな数値基準を設定せず、質的な内容を追加するなどの修正にとどめることも考えられる。ただし、この場合は実質的に数値基準を排除したことになる。数値基準は明確な閾値が提示されているだけに、金融政策へのコミットメントを強める効果が期待できるが、これが実質無名化すれば、ガイダンスのメッセージ性は弱まってしまう。
現在のところ、実際の失業率(2月:6.7%)が基準に達していないため、声明文には失業率基準について、新たな方針に変更しないことも考えられる。
このように、変更の方法は様々予想され、それぞれにメリット、デメリットがある。それだけに、フォワードガイダンスがどのように変更されるのか予想することは難しいが、今回はFOMC後に記者会見が予定されている。記者会見では、ほぼ確実に失業率基準への言及がされると見られることから、とりわけ注目と言えるだろう。


非農業部門雇用者数の増減(業種別)/失業率の変化(要因分解)

(2014年03月10日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

     ・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
      アドバイザー(2024年4月~)

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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