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- 【ブラジルGDP】伸び悩みが鮮明、投資減速にも懸念
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1.伸び悩みが鮮明に
ブラジルの地理統計院(IBGE)は2月27日、2013年10-12月期の国内総生産(GDP)を公表した。実質GDP成長率は前年同期比(原系列)で1.9%の増加となり、前期の+2.2%から減速、2四半期連続の鈍化となった(図表1)。ただし、前期比(季節調整済)の伸び率では+0.7%となり、マイナスに転じた前期(同▲0.5%)からは改善している。また、2013年通年の成長率は、前年比+2.3%となり前年(同+1.0%)から加速した。
2.投資の減速が大きな懸念に
ブラジルの10-12月期のGDPは、事前予想を上回ったことで、市場には安心感を与える内容だったと言える(Bloomberg集計の中央値は前年同期比+1.5%、前期比+0.3%)。米国の量的緩和の縮小(観測)によって通貨レアルは大幅に下落したが、今回のGDP統計では、成長率の急減速に至らなかったことから、経済低迷を受けて通貨の売り圧力が増すと言った展開は避けられるだろう。
しかしながら前年同期比で2%割れの結果は決して強くない。また、項目別に見ても弱さが目立つ。特に、これまで成長率改善の牽引役となっていた投資が、ワールドカップによる投資需要の一服や、中央銀行の利上げによる副作用で伸び悩んでいることは、大きな懸念材料と言える。中銀も利上げを続けており、あと数回は追加の利上げが実施されると見られる。こうした状況を考慮すると、今後も投資が牽引役となって成長率を高めるというシナリオに期待しにくくなっている。
ただし、ブラジルの場合はこうした中銀のインフレ抑制的な態度によって通貨の大幅下落が避けられている面も無視できない。加えて、政府も2月に440億レアル(約1.9兆円)もの財政削減を発表し、これも海外投資家に好感される内容だったと言える。これらの海外投資家からの期待を繋ぐような政策を見る限り、現在のところ中銀や政府の舵取りは悪くないと評価できる。
そのため、問題は、今後もこうした政策を続けることができるか、という点となるだろう。実体経済の回復は鈍く、冴えない状況が続くと見られる。また10月には大統領選挙が実施される。緩和的な金融政策やバラマキ的な財政政策への誘惑が強くなりやすい。こうした状況のなかでも、国民には不人気だが、海外投資家の期待を繋げるような政策を断行できるかが注目される。
(2014年02月28日「経済・金融フラッシュ」)
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- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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