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- 女性の消費は日本経済を活性化させる?
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成長戦略で言われている通り、少子高齢化による人口減少で労働力不足が懸念される日本では「女性の活躍」の促進が不可欠である。日本では結婚・出産を機に退職する女性が多く、縦軸に就業率、横軸に年齢をとると、30歳前後の就業率がへこみ、M字カーブを描くことが課題となっている。現在、政府では、M字のへこみを解消すべく、様々な政策を検討している。
実は、働く女性、自分で収入を得る女性が増えることは、手っ取り早く日本経済を活性化させる可能性がある。それは女性の方が男性よりも消費意欲が旺盛だからだ。特にF1層(女性の20~34歳)は大半が独身で可処分所得も多いため、昔から様々なビジネスのターゲットとされてきた。また、夫や子どものいる割合が増えるF2層(35~49歳)も、不景気になると夫のこづかいやスーツ代は真っ先に削るが、自分の美容・ファッション代は削らない傾向があり、この様子を用いて景気の状況をとらえる「父ちゃんの立場指数」という見方もある1。
これらは同年代の性差などに注目した見方だが、実は収入に注目しても面白いことが分かる。同じ年収階級の男女の消費性向を比べると、ほぼ全ての階級で女性の方が高くなるのだ(図)。同じだけのお金を持っていても、男性より女性の方がたくさんお金を遣うということだ。
消費支出の内訳をみると、女性は「住居」や「被服及び履物」、「その他の消費支出(交際費や諸雑費など)」が多く、「食料」や「交通・通信」、「教養娯楽」が少ない。また、男女とも年収の増加に伴い、各領域の支出額は増えるが、特に「教養娯楽」や「被服及び履物」、「その他の消費支出」などの生活必需性の低いものの増加率が高い。男女の増加率を比べると、全体的に女性の方が高く、特にファッションや美容で目立つ。つまり、男女とも年収の増加に伴って生活を各方面からグレードアップさせており、その様子は特に旅行やファッションなどのちょっとした贅沢によく現れるのだが、女性の方が顕著である。
働く女性、収入を得る女性が増えると、女性は消費意欲が旺盛だから消費が活性化する。実際は、減少する夫の収入を補うために働いている女性も多いだろうから、こんな単純な話ではないかもしれない。しかし、働く女性が増えると、家事・育児関連サービスなどの働くための消費も生まれ、さらに、そこには新たな雇用も生まれる。
「女性の活躍」が言われるとき、減少する労働力の確保というように、マイナスを埋めるような表現がなされることが多い。また、「育休3年」「上場企業で役員に1人は女性の登用」などの議論をみると、これからの女性は子育ても仕事もしっかり両立しなさい、と強制されるような印象もあり、冷めた目で見てしまう女性も少なくないだろう。よって、女性の賛同を得るには、マイナスを埋めるために働くことを促すのではなく、女性の消費は日本経済の押し上げ効果がある、さらに新たな雇用・市場という可能性も生み出す、女性が働くことは日本社会にとってプラスだ、だから必要だというような表現をした方が効果的なのではないだろうか。
日本経済は回復基調にあるが未だ課題は多い。さらに景気に勢いをつけるためにも、働く女性の増加、女性の消費に期待したい。
(2014年02月07日「基礎研マンスリー」)
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- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
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