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- 鍛えよう「共感力」-「寄付文化」育てるために!
先日、日本フィランソロピー協会の第16回「まちかどのフィランソロピスト賞」贈呈式があった。長い間寄付を続け、日本の「寄付文化」醸成に貢献した人を顕彰するものだ。表彰のポイントは、当該寄付行為が社会にとって役立っていること、継続的に行われていること、寄付を始めたエピソードがあること、の3点だそうである。今年の3名の受賞者の活動は、いずれもそのようなものだった。
受賞者のひとり、和知知明さんは、栃木県に住むラーメン店の経営者だ。東日本大震災の際には、被災地でラーメンの炊き出しを行った。また、和知さんは自分の得意な「書」を活かして、被災地支援のボランティア活動で知り合った人と協働でTシャツを制作、その販売で得られる一枚に付き千円のデザイン料を貯めて、80万円あまりを栃木県内の6カ所の児童養護施設に寄付している。
受賞した方たちのプロフィールを聞くと、決して経済的に余裕があるわけではなく、そこに共通していることは、社会的な課題や困っている人の状況を自分のこととして捉える豊かな「共感力」があり、自分の持てる能力を他者のために使っていることだ。豊かな感受性を持ち、人のことを他人のことと思えない人たちなのだろう。和知さんの受賞の挨拶は、行っている寄付活動が自分の力だけではなく、家族や仲間たちに支えられて続いていることへの感謝の言葉で締めくくられていた。
私は途上国の貧困に苦しむ子どもたちの支援を行っているNGOに毎年クリスマス募金をしている。そのNGOのホームページには、『ソマリアでは3千円で子ども二人分の栄養補助食品を1カ月分支援できます』と、分かり易くその効果が書かれている。人は誰しも困った人や苦しむ人を見て支援したいという「共感力」を備えているのだと思う。ただ、それを顕在化させるためには寄付の使途や具体的な効果を明示するなど、人々の寄付に対するモチベーションを高めることが重要ではないだろうか。
今年の青少年部門の受賞者である立川市立立川第七中学校は、冬の寒い時に防寒具をつけずに街頭募金活動を行っている。それは寄付先の人たちの置かれた厳しい環境を少しでも自ら追体験するためだという。生徒たちは街頭に立ち、離れた寄付先に思いを馳せながら「共感力」を鍛えているのだろう。
日本社会の中に「寄付文化」を定着させるためには、人々の個人的「共感力」とそれを生み出す社会的な制度や仕組みが必要だ。かつて寄付行為は人知れず行う“陰徳”とされたため、寄付の顕彰自体に違和感を覚える人もいるかもしれない。しかし、寄付という「共助」社会の基盤を築いていくためには、素晴らしい寄付活動を広く社会に普及・啓発し、「共感力」を鍛えることも欠かせないと思うのである。
(2013年12月24日「研究員の眼」)
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