コラム
2013年11月25日

「孤立無業」という社会病理 -「失業」から「孤立」に陥らない「再チャレンジ社会」を!

土堤内 昭雄

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最近、SNEPという言葉を聞くことがある。Solitary Non-Employed Personsの略で、『20歳以上59歳以下の在学中を除く未婚無業者のうち、ふだんずっと一人か、一緒にいる人が家族以外にはいない人々』と定義されている*。以前から、『専業主婦や学生を除く職探しをしていない15~34歳の若年無業者』を意味するNEET(Not in Education, Employment or Training)という類似の言葉もある。

労働力人口には求職中の無業者、すなわち失業者が含まれるが、そもそも求職活動をしていないNEETは含まれない。一方、SNEPは求職活動の有無にかかわらず、「孤立状態にある」ということに注目した概念だ。今なぜ、SNEPが注目されるかというと、日本の深刻化する社会的孤立の背景に、社会との重要な接点である仕事に就いていない潜在的無業者が多数いるからである。

厚生労働省の調査によると就業後3年以内に離職する人が、大卒で3割、高卒で4割に上る。それが自発的なステップアップのための離職ではなく、ブラック企業における過重労働や職場でのいじめなどに起因する心身の疲弊により、働く意欲を喪失した結果である場合も多い。最初は失業し再就職を目指すが思うようには行かず、徐々に家族以外との人間関係が薄れ、社会的孤立を深めていくのだ。そして一層再就職が困難になり、社会との関係性を断つ負のスパイラルに陥ってしまうのである。

NEETは2010年に約60万人と言われていたが、SNEPは現在162万人と推計されている*。人口減少時代を迎え大幅に労働力人口が減ると想定される日本で、総務省の労働力調査の完全失業率にも十分反映されないSNEPは、今後の経済成長や社会保障制度にとって大きな課題となることだろう。既に生活保護世帯が戦後最大規模となる中、稼働能力のある非高齢受給者が急増しているという現実とともに、将来的には多くのSNEPが無年金者になることが懸念される。

このようにSNEP問題は、以前のNEETにみる「若年無業」問題に留まらず、幅広い世代にわたる「社会的孤立」というさらに深刻な社会病理を抱えている。それは今後の日本社会の根幹を揺るがしかねず、その抜本的な解決に向けては、「誰にも開かれた再チャレンジできる社会」の構築が必要だ。

これまで成人には「自立」が強く求められてきたが、「自立」は決して「孤立」することではなく、他者との人的ネットワークの中で“自律的に依存すること”が重要である。多くの人が企業や家族が有した従来の福祉機能を享受できなくなった現在、われわれは他者同士が自律的につながる「共助社会」を目指して、トランポリン型のセーフティネットの再生を図らなければならないのではないだろうか**




 
   玄田有史著『孤立無業(SNEP)』(日本経済新聞出版社、2013年8月)

(2013年11月25日「研究員の眼」)

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土堤内 昭雄

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