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- 臨海副都心の景観資源を東京の新たな魅力に
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3棟の超高層ビルの上に船が浮いているシルエットといえば、すぐにシンガポールのマリーナベイ・サンズを思い浮べる方も多いだろう。マリーナベイ・サンズは大型会議場を備えたホテル、カジノ、ショッピングモールの複合施設で、世界的に有名なMICE1施設である。既に開業してから3年が経過したが、未だに目新しさがあり、テレビCMや旅行関連番組で目にすることは少なくない。映像の効果は絶大なので、有名な屋上プールに入るために日本からも多くの観光客が訪れたのではないだろうか。
小さな都市国家ながら、シンガポールの都市競争力は高く、東京のライバルとして頻繁に話題にあがる。その要因として、企業経営に有利な税制、英語と中国語が通じる言語環境、空港などの良好なインフラ整備状況などが挙げられるが、マリーナベイ・サンズのインパクトのある姿がオフィス街の中心部から見える点も無視できない。オフィス街と観光リゾートが一体となったマリーナベイを東京でたとえると、東京駅の八重洲側が海に面し、眼前にお台場のような開放的な空間が広がっているようなものといえるだろう。
アジアパシフィック地域の主要都市をみると、シンガポール2をはじめ、香港3 や上海4 、シドニーやホーチミンシティ5 など、港湾都市として海や河川と一体となって開発された街が多い。これらの都市では、オフィス街が無機質なビル街ではなく、開放感のある水辺の景観スポットにもなっている。
これに対し、東京でも、高層ビルの公開空地を上手く緑化した例や、様々な並木通りなど、数多くの美観がみられる。皇居や新宿御苑などの大規模な緑地もあり、必ずしもコンクリートジャングルではない。しかし、全体的な東京の印象といえば、利便性は高いものの、建物が密集している印象が強い。水辺を伴った開放的な景観が少なく、また、都心のオフィス街で東京湾の存在を感じることはほとんどない。
ところが、東京でも臨海副都心に足を運べば圧倒的な開放感を感じることができる。たとえば、お台場の景観はシンガポールのマリーナベイにも引けを取らず、砂浜で得られる開放感には都心とは思えないリゾート地の雰囲気が漂う。対岸にはレインボーブリッジ、さらには東京タワーやスカイツリーなどの東京を代表する建造物を見ることもできる。最近では、お台場から有明までをつなぐシンボルプロムナード公園が完成し、都心であることを忘れさせる広大な空間が整備されている。
現在、東京都が進めているアジアヘッドクォーター特区構想では、優遇税制などの他、臨海副都心でのMICE施設の開発も大きなテーマのひとつである。会議場やカジノが開発された場合、臨海副都心はシンガポールのマリーナベイと同等の機能を備えたエリアになる。
しかし、臨海副都心にとって、都心中心部から離れた不便なエリアというイメージの払拭が課題である。各方面からのアクセスが改善されなければ、新たな開発後も、目新しさが薄れるにつれて孤立したエリアとして活気を失いかねない。交通アクセスの充実を図り、臨海副都心が東京駅の八重洲口にあるような感覚になれば理想的である。鉄道路線の拡充は難しいとしても、バスや水上交通も含め、安価で短時間のアクセス手段を工夫したい。さらに、臨海副都心からスカイツリー・浅草方面や横浜方面への観光アクセス、ゴルフ場などへのレジャーアクセスも充実できれば、MICE施設として魅力的なだけでなく、アジアの中で東京の魅力をもう一段高めるものになると期待できる。
(2013年09月06日「基礎研マンスリー」)
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