- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- ジェロントロジー(高齢社会総合研究) >
- 高齢者市場・マーケット >
- 「少子高齢化」という複合課題 - 少子化対策と高齢化対策のクロスオーバー
最近、「少子化」と「高齢化」の進展が表裏一体となり、「少子高齢化」による複合的社会事象を実感することが多い。先日も、オヤッと思う新聞記事を目にした。タイトルは『おむつ生産 高齢者シフト』(日本経済新聞2013年7月11日)だ。これまで紙おむつといえば乳幼児用と思っていたが、少子高齢化が進展し、乳幼児用の生産量が頭打ちであるのに対して、大人用が急速に拡大しているのだ。
日本衛生材料工業連合会によると、乳幼児用紙おむつは2010年の実績値86億3000万枚に対して5年後の需要は82億9700万枚と3.9%減少、大人用は2010年の実績値44億3100万枚に対して5年後の需要は52億6900万枚と18.9%増加、2020年頃には大人用が乳幼児用を上回ると予測されている。また、大人用の価格は乳幼児用の約2.5倍と高いため、既に金額ベースでは大人用が乳幼児用を上回っており、製造各社は乳幼児用の生産を海外にシフトし、国内は今後の市場拡大が見込める大人用の生産を中心に事業展開しているという。
別の事例としては、最近、電車内などでベビーカーの利用者をよく見かけることだ。これは、国土交通省が中心に進めてきた建物や交通機関のバリアフリー化による影響が大きい。高齢化が進展し、最初は主要駅にエレベーターやスロープを設置するなど、高齢者や車椅子の人が外出しやすい街づくりが目指されてきた。それが少子化が進む中で、子育てしやすいユニバーサルデザインの街づくりにもつながり、車いすの高齢者や障がい者だけでなく、ベビーカーの利用者が増加しているのである。
また、私はワーク・ライフ・バランスについて講演する機会があるが、以前は「仕事と子育ての両立」といった若い世代に向けた少子化対策としての話が多かった。しかし、最近では中高年管理職などを対象に「仕事と介護の両立」という高齢化対策として話すことが増えている。今日のワーク・ライフ・バランスも、「少子高齢化」という複合課題に対する解決策として求められているのである。
以上のとおり、現代社会では「少子化」と「高齢化」の相互作用による社会構造変化が起こっている。両者は表裏一体となりながら新たな課題を提起しており、これらに対する本質的な解決策は、「少子化」と「高齢化」の個別の視点からはなかなか見えてこない。年金問題も高齢者の受給と次世代の子どもの負担を複合的に検討しなければならない政策課題であることは言うまでもない。「少子化」と「高齢化」による各世代の課題の解決に向けては、「少子高齢化」という世代間の複合課題だとの認識に基づく、少子化対策と高齢化対策がクロスオーバーする政策対応が必要になっているのではないだろうか。
(2013年09月02日「研究員の眼」)
このレポートの関連カテゴリ
土堤内 昭雄
研究・専門分野
土堤内 昭雄のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2018/12/20 | 「定年退社」します!-「生涯現役」という人生の「道楽」 | 土堤内 昭雄 | 研究員の眼 |
2018/11/28 | 「人生100年時代」の暮らし方-どう過ごす?! 定年後の「10万時間」 | 土堤内 昭雄 | 基礎研レポート |
2018/11/27 | 「平成」の30年を振り返って-次世代へのメッセージは、「レジリエントな社会づくり」 | 土堤内 昭雄 | 研究員の眼 |
2018/10/23 | 「幸せ」実感できぬ社会-豊かな時代のあらたな課題 | 土堤内 昭雄 | 研究員の眼 |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年09月13日
ECB政策理事会-予想通り利下げ、今後は引き続きデータ次第 -
2024年09月13日
自動車保険料率の引き上げに向けた動き-自動車保険と傷害保険の参考純率の改定 -
2024年09月13日
インド消費者物価(24年8月)~8月のCPI上昇率は小幅上昇も2ヵ月連続で物価目標を下回る -
2024年09月12日
外国株式ファンドが一時、売却超過に~2024年8月の投信動向~ -
2024年09月12日
本社移転は従業員満足度にプラス効果をもたらすか?
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
【「少子高齢化」という複合課題 - 少子化対策と高齢化対策のクロスオーバー】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
「少子高齢化」という複合課題 - 少子化対策と高齢化対策のクロスオーバーのレポート Topへ