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私の家の前は小学校で、夏休みになると、毎朝、6時過ぎから子どもたちが校庭に集まってくる。6時半には、地域の大人たちも交え、音楽にあわせておなじみのラジオ体操が始まる。体操中も校庭を走り回る子どもがいたり、片隅で控えめに体操するお年寄りがいたりする。体操が終わった後も、子どもたちは、バスケットボールのシュート練習やサッカーボールでリフティング、ブランコ乗り、砂場遊び、鬼ごっこなど、思い思いに遊んでいる。時々、校庭や周辺地域の一斉清掃もやっている。
このような地域の一体感を感じさせる夏休みのラジオ体操の光景は、かつてはどこの街でもよく見られたものだ。しかし、主催者に聞くと、最近は開催が難しくなっている地域もあるという。理由は『早朝から大きな音量の音楽と子どもたちの歓声がうるさい』という苦情があるからだそうだ。以前、東京の公園で、噴水の音と遊ぶ子どもの声が騒音だとして、訴訟になった事例もある。
夏休みには旅行に出かける親子連れも多いが、通勤電車内では小さな子ども連れに対して冷やかな視線を感じることがある。集合住宅では、小さな子どもがいる家庭は、隣近所に気を使い、遠慮がちに暮らしている人もいる。子どもを生み育てることが社会的に強く要請されている少子化社会・日本だが、社会全体がそれを支援している雰囲気はあまり感じ取れない。
確かに子どもの行動には、周りの迷惑を顧みない振る舞いや騒音の発生など、快く思われないことがたくさんある。しかし、子どもたちに社会性を身につけさせるためには、子どもを自由放任するのではなく、社会が子どもに対して関心を持ちながら、子どもの様々な行動を受容することが大切だ。少子化する日本社会には、子どもや子どものいる家庭をもっと寛容に受け入れ、子どもや子育て家庭を社会全体が温かく包摂する「子どもに優しい社会」が求められているのだ。
7月末、政府の社会保障改革国民会議が、将来世代への負担の先送りの解消に向けた『全世代型の社会保障』の骨子案を提示した。世代間格差をなくし、すべての世代に優しい社会をつくるためには、まずは「子どもに優しい社会」を目指さなければならない。なぜなら、子どもはやがて大人になり、子ども時代の体験が大人の時代へと引き継がれていくからだ。『子ども叱るな! いつか来た道。年寄り笑うな! いつか行く道』という言葉がある。少子高齢化が進展する中、「いつか来た道」を思い起すと「いつか行く道」も見えてくる。少子化社会の課題解決に向けて「子どもに優しい社会」をつくることは、幸せな高齢社会実現のための一歩でもあるのではないだろうか。
(2013年08月05日「研究員の眼」)
土堤内 昭雄
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