2013年07月30日

鉱工業生産13年6月 ~輸出の伸び悩みを背景に生産の回復ペースは依然緩やか

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・市場予想を大きく下回る大幅な低下
・輸出の下振れがリスク要因

■要旨

経済産業省が7月30日に公表した鉱工業指数によると、13年6月の鉱工業生産指数は前月比▲3.3%と5ヵ月ぶりの低下となり、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲1.5%、当社予想は同▲2.6%)を大きく下回った。6月が大きな落ち込みとなったことで、6月の生産指数は直近の底である12年11月を1.2%上回る水準にとどまっている。
鉱工業生産は回復基調を維持しているものの、個人消費を中心とした国内需要関連指標に比べると弱さが目立つ形となっている。鉱工業生産は輸出の影響を受けやすいが、大幅な円安にもかかわらず輸出の伸び悩みが続いていることがこの背景にあると考えられる。
6月の生産を業種別に見ると、情報通信機械は前月比3.5%の上昇となったが、生産の牽引役となりつつあった輸送機械が5月の前月比▲3.7%に続き、同▲4.1%と落ち込んだほか、5月までの3ヵ月で10%以上の伸びとなっていた電子部品・デバイスも前月比▲6.7%の大幅低下となるなど、速報段階で公表される15業種中、13業種が前月比で低下した(1業種が上昇、1業種が横ばい)。
13年4-6月期の生産は前期比1.4%と2四半期連続の上昇となり、1-3月期の同0.6%から伸びを高めた。業種別には、国内販売の好調と米国向けを中心とした輸出の持ち直しを受けて、輸送機械が前期比1.0%と2四半期連続の増加、スマートフォン向け部品の増産などから電子部品・デバイスが前期比5.4%と2四半期ぶりの増加となったほか、低迷が続いていたはん用・生産用・業務用機械も設備投資の下げ止まりを反映し、前期比2.9%と6四半期ぶりの増加となった。1-3月期は前期比で増加した業種が15業種中、7業種にとどまったが、4-6月期は情報通信機械、プラスチック製品以外の13業種が前期比で増加した。生産の回復ペースは緩やかなものにとどまっているが、回復の裾野は広がりつつある。
製造工業生産予測指数は、13年7月が前月比6.5%、8月が同▲0.9%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(6月)、予測修正率(7月)はそれぞれ▲1.4%、1.7%であった。 13年6月の生産指数を7月、8月の予測指数で先延ばし(9月は横ばいと仮定)すると、13年7-9月期は前期比4.2%の高い伸びとなる。ただし、7月の生産は予測指数の伸びを下回る可能性が高いため、かなり割り引いてみる必要がある。
輸出は、円安による押し上げ効果がさらに高まることが期待される一方、中国をはじめとした新興国経済の景気減速が下押し要因になる恐れがある。先行きも個人消費を中心とした国内需要の堅調が生産を下支えする可能性が高いが、輸出が生産を下押しするリスクには引き続き注意が必要だろう。

(2013年07月30日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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