コラム
2013年07月22日

少子化社会と婚外子差別 - 「子育ての社会化」に向けた発想転換を!

土堤内 昭雄

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日本の民法では、法律婚の尊重・保護のため、婚外子の相続分は法律上の夫婦の子である嫡出子の半分と規定する「相続格差」が設けられている。それに対して1995年には最高裁大法廷が「合憲」判断を下しているが、最新報道では今年の秋にも「違憲」判断が出るのではないかと伝えられている。その背景には、子どもが親の結婚形態に起因する不利益を被るのは不当だと考えられることがある。

日本女性の嫡出第1子の出産時期は、90年代半ばまで結婚後10ヶ月目が最多だった。ハネムーンベイビーである。しかし、近年では結婚後6ヶ月目が最も多く、いわゆる「できちゃった婚」*が増加している。嫡出第1子に占める「できちゃった婚」による出生の割合は、1980年には12.6%だったが、2009年には25.3%に上り、近年の嫡出第1子の4人にひとりは「できちゃった婚」ベイビーなのである。

「できちゃった婚」が増加している背景には、結婚形態が多様化しているにもかかわらず、婚外子の不利益を回避するために、出産前に法律婚に移行しようとする日本的な“法律婚”重視の意識が垣間見える。その結果、日本の婚外子の割合は2%程度と諸外国に比べて極めて低いのである。

スウェーデンやフランスでは、2008年の婚外子比率が各々54.7%、52.6%と半数を超えているが、フランスのPACS法**のように、婚外子が差別されることのない法制度が整っているために、出生率はスウェーデン1.90、フランス2.01と高い。日本でも同様に、婚外子の差別が解消されれば、法律婚としての婚姻数は減少するかもしれないが、婚外子比率が上昇し、出生数が増える可能性は高い。

「近代家族」においては、子どもは扶養対象であり、子育ては家族内の私的行為と考えられてきた。しかし、少子化社会になった現在、出産そのものは個々人の選択によるが、生まれた子どもは日本の将来を支える「公共財」とも捉えられ、子育ては私的行為を超えた社会的行為になりつつある。即ち、社会全体で次世代を担う子どもたちをどのように育むかが問われているのである。

少子化への対応としては「子育ての社会化」を図ることが必要だが、それは子育てを全面的に社会が肩代わりすることではない。家族の営みを中心に子どもの命を育み、その喜びを家族が実感し、それを社会が支援するとともに、命を育む喜びを社会全体で共有することが重要なのである。今、「子育ての社会化」に向けて、法律婚に拘泥しない「ゆるやか社会」への発想転換と、多様化する結婚形態の中で、すべての子どもたちが社会的に平等な扱いを享受できる社会づくりが求められているのである。




 
   結婚週数が初めて生まれた子どもの妊娠週数より3週以上短いケースをいう(厚生労働省「人口動態統計特殊報告」より)
** 民事連帯契約(通称PACS)とは、共同生活を営むカップル(内縁者)を対象とし、同性カップル、異性カップルを問わず、法的婚姻関係になるカップルと同等の権利を認め公証する制度(Wikipediaより)

(2013年07月22日「研究員の眼」)

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