2013年07月12日

自治体の婚活支援策は少子化対策の切り札になりえるか

井上 智紀

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■要旨

厚生労働省が先月初めに公表した「平成24年人口動態統計月報年計(概数)の概況」によれば、2012年の合計特殊出生率(以下、TFR)は1.41と、2005年を底とした回復基調の継続が見込まれることが明らかとなった。一方で、出生数については103.7万人と、ついに105万人を下回る見込みであることも示された。

少子化対策の必要性が問われるようになって20年以上が経つが、少子化への取り組みは依然として重要な政策課題となっている。

2010年までのTFRの変化要因を有配偶率と有配偶出生率に分解してみると、有配偶率は引き下げる方向で、有配偶出生率は引き上げる方向で、それぞれ作用しており、近年、持ち直しの動きを見せているTFRは、有配偶率の引き下げ効果を有配偶出生率の引き上げ効果が上回ったことによることがわかる。

この5年間のTFRの変化について都道府県別にみると、47都道府県のすべてで有配偶率はマイナス、有配偶出生率はプラスの影響となっており、秋田県を除いて、有配偶出生率の効果が有配偶率のそれを上回っている。

団塊ジュニア世代を中心としたキャッチアップ効果が主に有配偶出生率に現れているとすれば、今後のTFRの向上には、有配偶率の向上、すなわち未婚者に向けた結婚支援に向けた取り組みが求められるといえよう。

実際に、多くの自治体では婚活支援に向けた様々な施策を展開して久しく、早い段階から取り組んできた自治体の中には、その成果がTFRの上昇として現れてきているところもあるだろう。本来結婚や結婚の時期が生活者個々の自由意志に基づくものであることからすれば、取り組みの是非や効果を疑問視する声があがることも理解できるが、少子化対策の重要性から鑑みれば、自由意志を妨げない範囲での取り組みには、十分な意義があるのではないだろうか。TFRの大幅な向上につながった自治体における取り組みからも、何らかの有益な示唆が得られ、少しずつでも少子化の改善につながることを期待したい。

(2013年07月12日「基礎研レター」)

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