2013年05月22日

貿易統計13年4月 ~輸出は米国向けを中心に持ち直し

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・貿易赤字(季節調整値)は2ヵ月連続で縮小
・米国向け輸出が自動車を中心に好調

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財務省が5月22日に公表した貿易統計によると、13年4月の貿易収支は▲8,799億円と10ヵ月連続の赤字となり、赤字幅は事前の市場予想(QUICK集計:▲6,200億円、当社予想は▲6,211億円)を上回った。輸出入とも前月から伸びを高めたが、輸入が前年比9.4%(3月:同5.6%)と輸出の伸び(前年比3.8%、3月は同1.1%)を大きく上回ったため、前年に比べた貿易収支の悪化幅は前月よりも拡大した。
季節調整済の貿易収支は▲7,644億円と26ヵ月連続の赤字となったが、3月の▲9,198億円からは赤字幅が縮小した。季節調整済の貿易赤字は依然として高水準ながらも過去最大となった2月(▲10,941億円)からは2ヵ月連続で縮小した。輸出は前月比0.0%(3月:同1.6%)と横ばいにとどまったが、輸入が前月比▲2.4%(3月:同▲1.3%)と2ヵ月連続で減少したことが貿易赤字の縮小に寄与した。昨年12月頃から円安基調が続く中、これまではいわゆるJカーブ効果から貿易収支は悪化傾向が続いていたが、ようやく円安が金額ベースの貿易収支の改善につながり始めた。
4月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比4.5%(3月:同▲10.5%)、EU向けが前年比▲12.6%(3月:同▲16.4%)、アジア向けが前年比▲4.9%(3月:同▲7.7%)となった。季節調整値(当研究所による試算値)では、米国向けが前月比13.1%、EU向けが同1.2%、アジア向けが同0.0%、全体では同0.5%であった。
景気が堅調に推移する米国向けが円安の追い風もあって自動車を中心に高い伸びとなっている。米国向け輸出数量指数の水準(季節調整値)はリーマン・ショック後では最も高い水準にまで回復した。一方、EU向けはここにきて若干持ち直しているものの依然として水準は低く、中国向けが日中関係悪化の影響が長引いていることもあり、自動車を中心に低迷が続いていることから、アジア向けもほぼ横ばい圏の動きが続いている。
輸出は米国向けを中心に持ち直しの動きが明確となっており、季節調整済の貿易収支もようやく改善に向かい始めた。ただし、個人消費を中心に強めの動きとなっている国内需要は、緊急経済対策の効果顕在化、消費税率引き上げを前にした駆け込み需要などから先行きも堅調に推移することが見込まれるが、このことは輸入の増加につながる。このため、13年度中の貿易赤字の縮小ペースは緩やかなものにとどまることが予想される。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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