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3月16日、鉄道各社の春のダイヤ改正が一斉に行われた。そこでちょっと話題になっているのが、JR京葉線だ。京葉線は朝の通勤時間帯である午前7時台と8時台の快速電車すべてを各駅停車に変更したのだ。その狙いは、快速通過駅の停車回数を大幅に増やし、その利便性を高め、混雑率が高い快速電車とそうでない各駅停車の乗車率の偏りを平準化することだ。それに対して従来の快速電車利用者からは、蘇我駅から東京駅までの所要時間が約3分長くなるため、反対の声が上がっている。
昨年末にJR東日本からこの改正案が発表され、今年2月には千葉県議会が「ダイヤ変更計画を改めることを求める意見書」を決議し、国土交通大臣に提出している。そこには『東京駅への到着に、現行のダイヤから見て最大11分ものおくれが生じることとなる。これは朝の東京に向かう交通の利便性を求め快速の停まる駅の街に住居を構えた人々にとって、耐えがたい、見過ごすことができないダイヤ変更計画である』と記されている。
また、このダイヤ改正に関する新聞報道のなかには、快速停車駅に近い住宅の資産価値の低下を挙げる記事もあった。朝の通勤時間の数分はマンション等の不動産価格にも影響を与えるというのだ。確かに分譲マンションのチラシには、「東京駅まで〇分、通勤至便!」などと書かれているので、これが数分伸びると販売価格への影響があるのかもしれない。まさに『時は金なり』なのだ。
しかし、東京までの通勤時間が3分程度長くなるデメリットはあっても、快速電車の混雑率が緩和され、少しでも不快な車内環境が改善されることは快速電車利用者にとっても歓迎すべきことではないか。むしろ、通勤者の高年齢化が進むなか、今、求められているのは3分の通勤時間短縮より、その通勤時間が不快なのかどうかという時間の質ではないだろうか。
他方、今回の京葉線のダイヤ改正で快速電車全体の混雑率こそ緩和されたものの、逆に各駅停車はどれもほどほどに混雑する状態になり、新たな課題が生じている。それは混雑する通勤時間帯に優先席が機能しないために、これまで時間がかかっても混雑していない各駅停車を利用していたお年寄り、妊娠中の女性、子ども連れや障がいのある移動制約者への対応である。大型のスーツケースを持った旅行者なども困るだろう。民主的成熟社会では多くの人の利便性の向上とともに、多様な少数派のニーズに配慮することも忘れてはならない。余談だが、毎朝、京葉線各駅停車に座り、のんびりと車内で読書を楽しんでいた私も、実は混雑していない各駅停車がなくなり困っている一人なのである。
(2013年03月25日「研究員の眼」)
土堤内 昭雄
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