コラム
2013年02月25日

新宿・都庁前なう -「内なる国際化」で東京を世界に売り込め!

土堤内 昭雄

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2月24日、日曜日、午前9時、私は新宿・都庁前にいた。今年で7回目を迎える東京マラソンに出走するためだ。これまで一度も抽選に当たったことのない私が、今年は10.3倍の狭き門をくぐり抜け、幸運にも3万6千人のランナーのひとりになったのである。今年の東京マラソン最大の話題は、東京がWMM(World Marathon Majors)という世界の主要マラソンツアーに加わったことだ。

WMMはこれまで5つの世界的マラソン大会、すなわちニューヨーク、ボストン、シカゴ、ロンドン、ベルリンから構成されていた。そこに今年アジアから初めて東京マラソンがメジャー入りしたのである。WMMは世界トップレベルの招待エリート選手に加え、多数の市民ランナーが参加し、観客動員数、応募者数、寄付金、経済波及効果など、どれをとっても世界を代表するマラソン大会なのだ。もちろん、トップアスリートにとってはWMMにおける記録は超一流のステイタスであり、賞金金額も大きい。今回、大会新記録で優勝したケニアのデニス・キメット選手には1,100万円が贈られた。

WMMに仲間入りした東京マラソンだが、歴史が浅いだけに他の大会に比べて見劣りする面があることも確かだ。そのひとつは外国人参加者が少ないこと。今年は2,980人と参加者全体の8.1%である。ニューヨークシティ(NYC)マラソンでは、約4万人の参加者のうちほぼ半数は外国人で占められ、日本から毎年500人ほどが参加している。

東京マラソンでは、NYCマラソンと同様にレース前日にフレンドシップランという外国人ランナーを歓迎するイベントが開催されている。私が参加したNYCマラソン2008の場合、百カ国を超える国からの外国人参加者が、思い思いのコスチュームを着て沿道の市民と交歓しながら走り、その夜はパスタパーティを楽しんだ。東京マラソンでは海外ランナーとのファンランに続き、餅つきや消防団の梯子乗りのデモンストレーションなどで外国人参加者をもてなして交流を図っている。

現在、東京は2020年の夏季オリンピック招致活動を本格化させているが、課題は国内支持率向上のほか、外国人が訪れやすい「内なる国際化」の実現ではないだろうか。日本を訪れた外国人が言葉の不安なく地下鉄を利用したり、楽しく観光やショッピングできるように、交通、文化、商業、行政等の公共的施設における案内表示の英語併記を徹底するなど、外国人を迎え入れる都市環境整備の一層の推進が必要だ。今年メジャー入りした東京マラソンは、東京を世界に売り込む“シティセールス”の絶好の機会であり、オリンピック招致に不可欠な「内なる国際化」の試金石でもあるように思える。


 

 観光庁「情報・資料」によると、2011年の日本人海外旅行者数1,699万人に対して、訪日外国人旅行者数は622万人に留まっている。


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