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- 「公園文化」の創造 -都市空間の“あそび”
私が勤務する会社は以前、東京・有楽町にあり、日比谷公園に面していた。昼食時や霞が関の官公庁へ打合せに行く時、よくその中を通ったものだ。最近、東京農業大学の前学長・進士五十八さんの 『日比谷公園~100年の矜持に学ぶ』(鹿島出版会、2011年5月)を読み、改めてその魅力に惹かれ、じっくりと公園内を歩き、探索してみた。
日比谷公園は1903(明治36)年に仮開園し、今年で110年目を迎える。本多静六博士設計の日本趣向をアレンジした洋風公園である。園内は広い園路で5つのゾーンに分かれ、フランス式庭園のシンメトリックな大花壇あり、心字池を中心にした和風庭園あり、テニスコートや健康広場、野外音楽堂ありと、実に多様な空間が広がる。それを進士さんは「幕の内弁当」のような公園と称し、多くの人に愛され続けている理由だという。
日比谷公園は日本の近代化の象徴でもある。開園当初から文明開化を示す3つの洋(洋花、洋楽、洋食)を紹介してきた。フランス料理の松本楼があるのも納得だ。伊藤博文など明治の元勲の国葬が行われ、日清・日露戦争の祝捷会が行われたのもここだ。関東大震災では避難所になり、仮設住宅ができ、戦後の食糧難の時には芋畑になったという。1954(昭和29)年の第1回全日本自動車ショウの会場になり、最近の格差・貧困問題の象徴でもある「年越し派遣村」が設営されたのも日比谷公園だ。進士さんは、『このような日本の近代化の歩みを現在に伝えている日比谷公園は、単なる緑地ではなく、人々の生活と共に育まれてきた文化だ』と指摘し、「公園文化」創造の重要性を訴えている。
日比谷公園のベンチ*に座っていると面白いことに気付く。公園を利用する人は時間帯により刻々と変わる。彼らの来園目的は何かと考えると、多くはただ歩くだけ、通過するだけ、ベンチに座ってボーとするだけなど、特別な目的があるようにはみえない。つまり公園は、特定目的のない「だれにも」「いつでも」開かれたオープンスペースなのである。
公園は市民の憩いや健康増進、環境維持、防災拠点、イベント会場など様々な機能を有すると同時に、特定目的のない“あそび”空間としても貴重だ。公園は一枚の風呂敷のように変幻自在に都市生活から“スピルオーバー”したあらゆる機能を包み込み、時代のライフスタイルや文化を醸成していく。そこに都市空間の“あそび”としての公園が、機能性を持ったハードの都市インフラを超えて、「公園文化」を創造するという価値があるのではないだろうか。
(東京都「思い出ベンチ事業」参照)
(2013年01月28日「研究員の眼」)
土堤内 昭雄
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