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- 若年層の金融機関・商品に対する考え方~4つの志向が存在
新しい年を迎え、年間の家計予算の計画を立てる方も多いのではないだろうか。
現在の若年層は日本経済が低迷する中で育ち、雇用情勢も厳しいために、貯蓄志向や節約志向が強いという論調が多い。実際のところ、どれくらいの預貯金を持ち、金融機関や商品に対してどのような志向を持つのだろうか。手元にあるデータで簡単に分析してみた。
20~30代の仕事を持つ未婚男女の預貯金残高をみると、いずれの層でも50万円未満が最も多く、20代では57.6%、30代では33.7%を占める(図表1)。50万円未満は特に20代の男性で多く67.6%に及ぶ。20代と30代を比べると、やはり年収水準の高い30代の方が預貯金残高の高い割合が多い。300万円以上をみると、20代では1割に過ぎないが(10.6%)、30代では3割を超える(31.5%)。また、男女を比べると、20代では圧倒的に女性の方が多い。30代では50万円未満は女性の方がやや多いものの、300万円以上は男性では3割に満たない一方(27.5%)、女性では4割近くに及ぶ(36.8%)。
さらに、金融行動において、どのような志向を持つのかを見るために、22項目の金融機関や貯蓄・投資商品に対する考え方や利用方法についての調査結果について、主成分分析1を用いて分析した(図表2)。その結果、4つの成分に要約されることが分かった。それぞれの成分に属する項目の主成分負荷量の大きさから、1つ目の成分は金融知識の高さや情報収集の積極的さに関する項目で主成分負荷量が大きいため「金融リテラシー重視」志向と理解することができる。同様に、2つ目はより良い商品・サービスを求め、リスクより収益性を重視する「収益性重視」志向、3つ目は貯蓄を好み元本保証を重視する「安全性重視」志向、4つ目は人や専門家への相談ニーズが高い「専門家への相談重視」志向と読み取れる。
また、性年齢階層別にどの主成分の影響が大きいのかを把握するために、それぞれの主成分得点を見ると、20代男性ではいずれの得点も低い(図表3)。これは預貯金が少ないために、いずれの志向も弱いということだろう。一方、比較的、預貯金の多い30代男性は「金融リテラシー重視」「収益性重視」志向が強い。女性はいずれの年代でも「安全性重視」「専門家への相談重視」志向が強く、預貯金の多い30代では「安全性重視」志向が非常に強い。つまり、預貯金のある30代では、男性は収益性を重視、女性は安全性を重視した運用を好む様子が窺える。
実態をより詳細に把握するためには、更なる分析が必要だが、本稿の分析で20~30代の仕事を持つ未婚男女の預貯金状況と4つの志向の存在、男女の志向の違いを把握することができた。
若年層では貯蓄・節約志向が強いという論調は多い。しかし、個人の預貯金状況や性別によって金融行動の志向は異なることを念頭に置き、各層に対して適切なアプローチを図ることが肝要だ。

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