2012年12月03日

法人企業統計12年7-9月期~企業収益、設備投資ともに低調

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・3四半期連続の増益だが、伸び率は鈍化
・投資計画先送りの動きが広がる
・7-9月期・GDP2次速報は1次速報とほぼ変わらず

■introduction

財務省が12月3日に公表した法人企業統計によると、12年7-9月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比6.3%と3四半期連続の増加となったが、4-6月期の同11.5%から伸びは鈍化した。
原油価格の下落などから売上高経常利益率は前年よりも改善(全産業:11年7-9月期:3.0%→12年7-9月期:3.2%)したが、売上高の減少幅が4-6月期の前年比▲1.0%から同▲4.4%へと大きく拡大したことが、増益率低下につながった。製造業は、輸出の減少を主因として売上高が前年比▲5.6%(4-6月期:同5.0%)と3四半期ぶりの減少となり、経常利益も前年比▲2.1%(4-6月期:同2.7%)と3四半期ぶりの減益となった。一方、非製造業の経常利益は前年比10.2%と4-6月期の同16.0%からは伸びが鈍化したものの、3四半期連続で二桁増益を確保した。
季節調整済の経常利益は前期比▲1.7%(4-6月期:同▲2.4%)と2四半期連続で減少した。製造業が前期比▲4.5%(4-6月期:同▲5.4%)、非製造業が前期比▲0.5%(4-6月期:同▲1.1%)であった。海外経済減速に伴う輸出の低迷を反映し、製造業の落ち込みが特に大きくなっている。
日本経済は12年春頃をピークに景気後退局面入りしているとみられるが、ここにきて企業収益も悪化傾向が明確となってきた。ただし、現時点では収益の悪化ペースは過去の景気後退期に比べると緩やかにとどまっており、大幅な減少が続いていた鉱工業生産が12年10月に4ヵ月ぶりに前月比で増加に転じるなど、景気は底入れの兆しも見られる。低迷が続いている輸出が下げ止まることが条件だが、企業収益は近いうちに持ち直しに向かう可能性もあるだろう。
本日の法人企業統計の結果等を受けて、12/10公表予定の12年7-9月期GDP2次速報では、実質GDP成長率が前期比▲0.8%(前期比年率▲3.4%)になると予測する。法人企業統計の結果を受けて、設備投資が1次速報の前期比▲3.2%から同▲2.7%へと上方修正される一方、公的固定資本形成が前期比4.0%から同3.2%へと下方修正されることから、成長率は1次速報(前期比▲0.9%、年率▲3.5%)とほぼ変わらないだろう。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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