2012年11月02日

金融市場の動き(11月号)~追加緩和による円安効果の正体

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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  1. (為替) 10月は日銀の追加緩和が一大テーマとなった。「日銀の(資産買入増額による)追加緩和=円安要因」というのは共通認識となっているが、日銀の総資産やマネー供給量拡大自体はあまりドル円との相関がない。ドル円について説明力が高いのは日米2年債金利差であり、最近の為替の動きもこれに沿ったものだが、同金利差に対して日銀は殆ど影響を与えることが出来ない。しかし、追加緩和が意味なしというわけではない。一つは長期金利を通じた効果だ。国債買入によって長期金利が低位に誘導されることは、日米長期金利差を通じて円高圧力を抑制する効果を持つと考えられる。また、投機筋は金融政策の変化を重要な売買材料にしており、追加緩和は円売り材料となる。投機筋のポジション変化は速いため持続性はあまり期待できないものの、近年投機筋の動きとドル円の連動性が強まる中で、強い緩和姿勢を示し続けることは円安に繋がる。
  2. (日米欧金融政策) 10月の各国金融政策は、月末に日銀が連月となる追加緩和を実施する一方、欧米の金融政策は現状維持となった。11月はおそらく無風となりそうだが、12月FOMCに向けてFRBが追加緩和姿勢を見せるかどうかが次の焦点となる。
  3. (金融市場の動き) 10月の金融市場は、円安ドル高、ユーロドルは一進一退、長期金利は横ばいという結果となった。当面の予想は、ドル円と長期金利は横ばい圏内の動きに、ユーロ相場はギリシャとスペイン問題の進展次第と見る。



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(2012年11月02日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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