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不動産事業者の環境配慮を評価するGRESB調査~今年はJ-REIT8社が回答するも参加率はやや低調~
金融研究部 不動産調査室長 岩佐 浩人
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先月上旬に、不動産事業者(ディベロッパー、運用会社など)の環境配慮やサステナビリティ(持続可能性)を評価する「グローバル不動産サステナビリティ・ベンチマーク(GRESB、グレスビー)」の調査結果1が公表された。「GRESB」は、ESG(環境、社会、ガバナンス)への配慮を不動産投資にも適用し株主価値を高めることを目的に、欧州の主要な年金基金が中心となって創設した財団(ベンチマーク名を兼ねる)である。環境配慮の方針策定や管理体制を問う「マネジメントと方針」、実際の取り組みやエネルギー消費量などの実績データを問う「実行と計測」の2つの評価軸をもとに、環境対応をはじめたばかりの「グリーンスターター(不言不実行型)」から、「グリーントーク(有言不実行型)」、「グリーンウォーク(不言実行型)」、環境対応の模範となる「グリーンスター(有言実行型)」までの4分類で事業者を評価する仕組みだ。
今年で3回目となる調査では、全世界で443社(運用資産額1.3兆ドル)が回答し、全体の約20%にあたる85社が「グリーンスター」を獲得した。日本からはJ-REIT(不動産投資信託)8社を含む24社が回答し2、ほぼ全社がエネルギー消費量を把握したこと、震災後の節電努力によりエネルギー消費量を前年比9%削減したことなどが報告されている。昨年は、J-REIT2社がアジア地域(上場企業)の上位5位にランクインしたが、まもなく各社から発表されるスコアや自己分析などにも注目したい。
日本の不動産賃貸事業に特化するJ-REITが、不動産ポートフォリオのサステナビリティを世界共通のモノサシで評価する「GRESB」調査に参加することは、海外への情報発信の強化、サステナビリティを重視する長期の年金資金の取り込み、環境規制やテナントニーズに対応した効率的な省エネルギー投資などの重要課題に対処するうえで有力な手段の1つとなる。また、第三者による公正な格付け評価はJ-REIT市場の透明性と規律を高める効果も期待できそうだ。
ただし、上場企業を対象にエリア毎の市場カバレッジ率(参加率)を比較した場合(図表1)、アジアは他の地域(北米44%、欧州65%、オセアニア75%)を下回る11%にとどまり、アジアの事業者の調査協力意識は全般的に低いと言える。また、今回調査に回答したJ-REIT8社の市場カバレッジ率を計算すると、アジア平均を上回るものの28%であった。
このような低い参加率は、環境配慮に対する市場参加者の見識や市場の成熟度を反映した結果でもある。投資家の関心が乏しければ、事業者も敢えて調査に回答しようとは思わないであろう。「今年のGRESBの評価はいかがでしたか?」、「GRESB調査に参加してはどうですか?」こうした毎年の対話の積み重ねを通じて、J-REIT市場全体の持続的成長が高まることに期待したい。
CSRデザイン環境投資顧問http://www.csr-design.com/
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