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- 減少する日本人留学生-グローバル化と英語
1.減少する日本人留学生
日本から海外に留学する若者が減少を続けている。文部科学省のデータによれば、2004年の82,945人をピークに、2009年には59,923人にまで減少した。最近若者が内向きになっていることが原因であるなどという批判も多いが、この背景には、海外留学の対象となる若年人口が減少していることや、リーマンショックによる経済状況の悪化・企業のスリム化で企業派遣の留学生が減少していることなど、様々な要因が絡んでいる。
日本人の海外留学生数については、最近急速に減少しているということだけではなく、人口が日本の半分以下の5000万人程度の韓国よりも日本人の海外留学生数の方が少ないという、そもそもの水準の低さも問題として指摘されてきた。さらに、日本からの留学生は他の国からの留学生に比べて、大学院レベルの留学生の比率が低く、学位取得を目的としない比較的期間の短い留学が多いと言われている。
2.成功が生んだ問題
いくら工業が発展しても、機械を作る機械である工作機械が国産化できなければ、工業化は本物ではないのだそうだ。この話を教育に置き換えれば、日本は大学・大学院の教員や研究者を育成できるという意味では明治以来の高等教育政策は、大きな成功だったと言える。最先端の研究・教育を担う研究者の育成を海外に依存しなくてもすむようになったことは、海外留学生が他の国々に比べて少ない原因の一つだろう。しかしその反面、海外留学者数が少ないことは、欧文の論文数や学会発表など海外への発信力が弱いことに繋がっているという点も否定できない。
海外とのコミュミケーション能力の不足という問題は、高等教育機関や研究機関だけの問題ではない。文化や外交はもちろん企業活動においても、日本経済がさらなる発展を遂げるためには、海外とのコミュニケーション、特に情報発信能力が必要だ。グローバル化が進む中で、日本の経済・社会全体が対応を求められている。
3.英語とどう付き合うか?
筆者の英語力はお恥ずかしいレベルであり、資料を日本語で読むのと英語で読むのとでは、速度が10倍は違う。資料を用意して発表するという話になれば、100倍時間をかけても英語の発表レベルは日本語でのものとは比較にならないという感覚だ。
もしも日本の高等教育を英語で行ったとすれば、育成できる研究者の数は現在よりもはるかに少ないだろう。日本語の教科書が整備され、母国語で高等教育を行っているから、高水準の教育を多くの人に提供できているという面は否定できない。外国語と日本語をどう使い分けるかは、明治維新で海外の進んだ制度や科学技術を導入した際に日本語廃止論まで出たように、非常に大きな課題だ。
英語の早期教育を行うとしても、最終的に日本語と英語の両方を使いこなせて、なおかつ専門領域の研究能力も高いという人材に育つような多彩な潜在能力を持つ人は、ごく一握りだろう。ほとんどの人が英語は理解でき、かなりの人が高いコミュニケーション能力を持ち、かなりの人がコミュニケーション能力はやや劣るものの高度な専門能力を持っている。そして、ある程度の数の人が高いコミュニケーション能力と専門能力を合わせ持つ。日本は、このような社会を目指すことになるだろう。
そのためには、どのような教育のシステムが良いのか、明治維新、第二次世界大戦後に続いて、日本の教育システムは大きな変革を迫られている。
(2012年09月26日「エコノミストの眼」)
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